<最終回>本を出す「思い出す度、故人は生き続ける」
2012年7月2日
自分の自由を求めて。残りの少しの時間だけでも、強要されるのは嫌だ。人にしてあげることは好きでも。
本当は泣き叫びたかった時もあったろう。佳江さんは、書くことによって平静さを保とうとしたのと同時に、生きた証しを残そうとしたのかもしれない。
小宮さんが続ける。
「自分の死後も人々の記憶にとどまりたいという気持ちは、誰の心にも少なからずあると思います。歴史に名を残すような有名人もいますが、たとえ無名の人であっても誰かに覚えていてもらいたいという気持ちは同じでしょう。それが今回は、たまたま僕という媒介があったわけで、『妻はこういう人でした』と他の人に語ってやることができた。一般の人が本を出版するのは難しいかもしれませんが、故人を思い出したり、生前の出来事を語ったりはできます」
2年前に他界した永六輔さんは、「人は2度死ぬ」と話していた。1度目は生命がその活動を終えた時。2度目は自分を覚えている人がいなくなった時だ。