自らの特性に向き合う「発達障害」は自己理解のツールだ
大学院修了後に就職した会社に正社員として15年以上勤務する一色宏治さん(41)の年収は、平均的な同世代のサラリーマンと比べても高めである。障害者雇用ではないし、障害者手帳や障害者年金ももらっていない。
しかし、一色さんは、他人と同じようにうまく仕事や生活ができないという悩み、生きづらさ、仕事のしづらさをずっと感じていた。病院ではADHD(注意欠如・多動性障害)と診断され、ASD(自閉スペクトラム症)も、定型発達者(健常者)と発達障害者の中間に位置するグレーゾーンだと診断されている。
「短期記憶がないので、すぐに覚えておかなければいけないことを忘れてしまうし、電車の乗り間違えとか忘れ物も多い。いま自分が何をやるべきだったのか忘れてしまうこともしょっちゅうです。会社では、『よく独り言を言っている変なやつ』みたいに思われていますね(笑い)」
もっとも、これを読んだ読者の中には、「そのぐらいのことなら自分もあるし、普通の範囲内。発達障害と言うほどのことはないのでは」と思った人もいるのではないだろうか。