子供のころから「普通の人との違い」を感じていた
1978(昭和53)年に生まれた一色宏治さん(41)は、子供のころから、家族や周囲によく「変わっている」と言われたという。
幼稚園に入ると、自分は一向に人の顔と名前を覚えられないのに、他の子供は覚えているらしいことに気付いた。それが一色さんが、初めて感じた「普通の人との違い」だった。また、靴や靴下をはかないまま家に帰ってしまったり、着替えが苦手で、着替えるときには女の子たちが手伝ってくれていたという。
「他にも、自分の世界に閉じこもって、クラスの子供たちが他の部屋に移動しているのに、自分は気付かず、気付いたら教室にひとりきり、なんてことも、よくありましたね」と振り返る。
いま一色さんは自分をADHD(注意欠陥多動性障害)と、ASD(自閉症スペクトラム)の両方の特性を持っていると考えているが、子供のころは、ASDのほうが強かったのではないか、と分析する。
「もっとも、勉強だけはできたので、小学校に入ってもなんとか授業にはついていけました。ただ人の顔と名前は一致しないまま。小学校低学年のとき、クラス名簿を出席番号順に丸暗記してなんとか乗り切りましたが、相変わらず顔とは一致しない。それを、ごまかしていましたね」と話す。