明確な治療法がなく生活上の不便を解消するテクニックが重要

公開日: 更新日:

■診断書提出で退職勧奨を受けたケースも

「ある患者さんは、APDの診断書を会社に提出したことで、職場がさまざまな配慮をしてくれるようになり、以前より格段に働きやすくなったそうです。これはいい例ですが、中には診断書を提出したことで、『治らないのなら退職してくれ』と退職勧奨を受けてしまったケースもあります。これは悲しいことですが、やはり長く働き続けられる職場に行くためには、聞こえをあまり重視しない仕事や、静かな環境で働ける職場を選ぶことも大事になってくるでしょうね」

 APDは、聴力に異常はなく、音は脳まで伝わるものの、脳での言語処理に時間がかかるために、うまく理解できない状態であると考えられているが、明確な原因が分かっているわけではなく、治療法も確立されていない。聞いたことを覚えていられない短期記憶の障害など、発達障害と合併していることもあり、その研究もまだ始まったばかりだ。

「それでも、最近APDの人たちが、ツイッターなどネットで情報交換をするようになり、当事者会なども各地で開かれているので、そういったところに足を運んで、仕事を続けるノウハウを教えあうこともできるでしょう。具体的には、ノイズキャンセリングイヤホンという、雑音をカットするイヤホンを耳につけると、聞きやすくなるというケースもあります。ただ、これも雑音ではない音もカットしてしまう場合がありますし、そもそも職場の理解がないと、仕事中に音楽を聴いていると思われて注意されてしまいますから、使い方に注意が必要でしょう。また、UDトークというスマホ用のアプリは、音声を自動的に文字に変換してくれるアプリで、ほぼ無料で使うことができます。これからは、こういったツールもAPDの人たちを助けるものとして、さらに広まっていく可能性は大きいですね」

 まずは、APDに関する周知が進み、患者さんが自身の症状から病名を知ったうえで生活上の不便を克服するテクニックを身に付けることが大切だ。それと共に、その患者さんが必要な配慮を普通に受けられるよう、世の中が変化していくことが求められている。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  2. 2

    ソフトB悪夢の本拠地3連敗「2つの敗因」…26イニング連続無得点よりも深刻なチーム事情

  3. 3

    石井琢朗コーチが三浦監督との《関係悪化説》を払拭、「ピエロ」を演じたCS突破の夜

  4. 4

    二宮和也「七五三」隠し撮りに激怒の覚悟…入学式や運動会にも厳しい視線、あの俳優夫婦も警告の過去

  5. 5

    旧ジャニーズ“復活”で女帝復権か…米国でスルー状態のTravis Japanを日本メディアが一斉ヨイショの裏

  1. 6

    あの大谷翔平が苦々しい顔でインタビュー拒絶…フジテレビと“愛車無断公開犯”元木大介氏の先輩づらに嫌悪

  2. 7

    岡田阪神“強制終了”は「事実上の解任」…体調不良で異例の退任会見ナシなど誰も信じない

  3. 8

    いまや大谷ドジャースこそ「悪の帝国」だ…カネ&人気&裏技フル活用でタンパリング疑惑まで

  4. 9

    大谷翔平は来季副収入100億円ガッポリ、ド軍もホクホク! 悲願の世界一で証明した圧倒的経済効果

  5. 10

    グリズリーズ河村勇輝に試練!ルーキーが直面する超過酷な伝統「雑用係」衝撃の中身