麻酔薬が主成分の新たな抗うつ薬が登場 2~3時間で効果が
「ところがすべての新規化合物が失敗。ということは、ケタミンが持つ、NMDA受容体への作用以外の“何か”が抗うつ作用をもたらしていると考えられる。そこで、NMDA受容体への作用が弱い、言い換えれば、それ以外の“何か”を持っているR型の研究を始めたのです」
当初は“S型派”が優勢だったが、16年、米メリーランド大学や米国衛生研究所(NIH)の研究者が世界的権威の医学誌「ネイチャー」に、橋本教授の主張を裏付ける論文を発表。現在は、R型への抗うつ作用への期待が高まるばかりだ。なお、S型ケタミンの第3相臨床試験では、全5本のうち2本しか偽薬に対し優位性を示せなかった。この結果から「S型ケタミンにも抗うつ作用があるが、ケタミンの抗うつ作用を主に担っているのはR型では」と、橋本教授は考えている。
「ケタミンの副作用は、NMDA受容体が関与していると推測されている。NMDA受容体への作用が弱いR型を抗うつ薬の主成分とすれば、副作用も見られない可能性が高い」
橋本教授のR型ケタミンは最近、臨床試験が始まった。結果が出るのはそう遠い未来ではない。