<6>ウイルスの突然変異が危険とそうでない場合があるのはなぜ(1)
突然変異はウイルスの性質を変化させるのか。実は必ずしもそうではない。突然変異によって遺伝情報が書き換わっても、作られるタンパク質が量も質もほとんど変化しない場合もある。また、たとえタンパク質が変異したとしても、ウイルスそのものの性質が変わらない場合も多い。一方、場合によってはウイルスの性質を大きく変化させる突然変異もある。しかし、そのような変異ウイルスのほぼ全ては、感染や増殖の効率が落ちている“出来損ない”である。もともと感染・増殖できていたウイルスを複製するための遺伝情報にエラーが入れば、感染・増殖能力が落ちる変異ウイルスができるのだ。
しかし、極めてまれではあるが、感染する効率や増殖速度が向上するなどの突然変異が生じることもある。そのような“危険”な突然変異を起こしたウイルスはその後どのような運命をたどるのか、それは次回取り上げたい。
(中川草・東海大学医学部分子生命科学講師)