10月から先行運用される「電子処方箋」は患者にどんなメリットがあるのか
「さらに、患者さんにとって利便性の向上につながっていくと考えられます。コロナ禍で普及が進んだオンライン診療やオンライン服薬指導がもっと増えてくれば、患者さんは自宅でオンライン診療を受診して電子処方箋を出してもらい、薬局のオンライン服薬指導を受けて、自宅に薬が配送されるようなサービスが実施されるようになるでしょう。薬を処方してもらうのに長い時間がかかるようなケースが減るうえ、外出が難しい高齢者などの患者さんや、医療機関や薬局が少ない地域の患者さんにとっては大きなプラスになるといえます」
薬の処方がすべてオンラインで完結する──電子処方箋の導入は、その仕組みづくりのための第一歩といえる。
ただ、完全なオンライン処方にはまだいくつも課題があるという。
「対面で薬を処方する際、片方の足を引きずっているなど、患者さんの“異変”を薬剤師が直接目にして気付くケースがあります。そうした場合、担当医に伝えたり、薬を見直すなどの対処が必要です。電子処方箋を皮切りにオンライン処方が進んでいくと、医師や薬剤師が目で見て判断する機会が減ってしまいます。本当は診察が必要な患者さんを見逃してしまう可能性もあるのです。また、薬の中には定期的に検査を受けながら服薬しなければならないものもありますし、体調や季節によって薬の効きが変化して見直しが求められる場合もある。どこでもオンラインのみで薬が処方されるようになると、そういったケースを見過ごしてしまうリスクも考えられます」
電子処方箋の運用については、まだ具体的な対象や範囲がはっきりしていない状況だというが、近い将来に予想される完全オンライン処方で深刻なトラブルが起こらないよう、いまからしっかり議論していく必要がありそうだ。