柳沢先生!教えて!睡眠で知りたいこと全部聞いた(後編)「寝酒をするくらいなら睡眠薬を」
世界的な発見ができる学者はここが違う
──そういうことを知っていれば、勉強法も変わってきますね。最後に柳沢さんのように世界的な発見ができる人というのは、一体どこが違うのでしょうか?
24年いたテキサス大学の師匠で、ジョセフ・ゴールドスタイン先生とマイケル・ブラウン先生という方がいます。お2人ともノーベル賞学者ですが、イソップのキツネとハリネズミの物語のことをおっしゃっていました。キツネはいろんなことをまんべんなくよく知っていて博学、ハリネズミは自分の得意分野はすごくよく知っている。良い科学者であるためにはキツネであると同時にハリネズミでなくてはいけないと言うのです。医学だけでなく、サイエンス全般に関して博学でなければならない。狭い専門領域だけを知っているのでは良い研究はできないのです。なぜなら、研究って舵取りの連続なんですね。どっちの方向に進むか、どっちのプライオリティーが高いか。正確に判断できることが重要です。その判断の際に、さまざまな分野のことを知っていると、何が大事なのかが見えてきます。
──キツネであるために努力されていることはありますか?
自分の領域だけではなく幅広く論文を読んでいます。何もしないで、ぼーっとしている時間も大事にしています。マイケル・ブラウン先生は「いいアイデアはヒゲを剃っている時に思いつく」と言っていました。ぼーっとしてるじゃないですか、ヒゲを剃っている時って。僕は温泉好きなんで、近くのスーパー銭湯に行く。そこで、ぼーっとしています。心理学でデフォルトモードと言うのですが、特別に何かをやっていない時の脳の働きが注目されています。
▽柳沢正史(やなぎさわ・まさし)筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構長。1960年5月生まれ。睡眠覚醒を制御する神経伝達物質オレキシンの発見者。米科学アカデミー正会員。紫綬褒章、朝日賞など受賞多数。