中高年が知っておくべき「職場転倒」…就業中の傷害事故のトップ

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 しかし、高齢労働者のケガや病気の原因が、加齢でなく仕事にあると証明することは難しい。労災が認められないケースも少なくなく、補償を得るのを泣き寝入りする高齢労働者もいる。弘邦医院の林雅之院長は言う。

「最近は百寿者が増えて元気な老人が多いイメージがありますが、個々にみると必ずしもそうではありません。老化が進んで反応が鈍くなっている人や白内障などで足元が見えづらくなったり、筋力の衰えで重心のちょっとした移動で体を支えることができないなど、転倒リスクの高い中高年は多い。ところが、そういう人のなかには『今の高齢者はかつての実年齢より10年若い』などといって無理するケースも。最新の米国スタンフォード大学の研究では、44歳と60歳で体内の分子レベルで劇的変化が起こり、老化が加速することが報告されています。にもかかわらず、お金のために働かざるを得ない高齢者が増え、私のクリニックでも仕事でケガをしたり不調になる人が少なからずいます」

 政府は、少子化による労働力不足を補うために、家庭の主婦を職場に送り込み、定年延長で高齢者を職場に駆り立ててきた。そのたびごとに健康における性差や高齢者の老化等のリスクは無視され、職場の健康について十分な情報を発信しているとはいえない。

 高齢労働者の中には実質的なセーフティーネットなしで働く人もいる。政府は人手不足ばかりを叫ぶのではなく、高齢な男女が仕事をすることのそれぞれのリスクや、万一のときの補償について積極的に検討する必要があるのではないか。

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