長寿研究のいまを知る(8)「ラパマイシン」を世界の長寿研究者が注目する理由
オートファジーとは細胞内を健康に保つために不要物を回収・分解し、新たな物質を合成して再利用する仕組みのこと。これが正常に機能することで細胞は元気でいられる。2016年にその研究で大隅良典・東工大栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新しい。
長寿研究者が驚いたのは、このmTORの働きを抑えるラパマイシンを投与するだけでマウスの寿命が延びると実験で明らかになったことだ。
■種を超えた老化システムに作用
「酵母、線虫、ショウジョウバエではmTORの機能が低下すると寿命が延長することが知られていましたが、09年の世界的科学雑誌に掲載された3つの研究機関からなる報告が衝撃的でした。ラパマイシンを哺乳類である雌雄のマウスに投与したところ、寿命の中央値および最大値が14%も延長。生後270日目、同600日目からラパマイシンを与えられたマウスでも寿命延長効果が認められたというのです」
近年の研究により、老化は遺伝子や細胞の信号伝達経路、生化学的な反応によって制御されていて、遺伝子の改変などにより操作することが可能だとわかってきている。