酔ったオヤジの“ジャズ話”を若い女性2人が聞かされる蒲田の風景
ゴリゴリのジャズバーに若い女子
古い商店街サンライズを視察すると、蒲田日活、テアトル蒲田の看板がそのまま残っている。そこには大きく「上映中」。最後の映画は何だったんだろう……。
ちょっと切ない気分で「モダンジャズ直立猿人」へ。映画館、書店と並んで昭和の街から消えているもののひとつがジャズ喫茶。街から文化が感じられなくなるのも無理ないか。
来年オープンして50年目を迎える直立猿人はゴリゴリのジャズバー。バーボンロードのはずれ、今にもぶっ倒れそうなビルの3階。この急な階段から何人の酔っぱらいが転げ落ちたことか。
口開け早々の歓迎の曲はソニー・ロリンズ。ブラックニッカのロックをダブル(1200円)でぐびり。バーボンロードからの流れなのか、こんなジャズバーに若い女性が2人で来ることもあるらしい。
「ジャズ狂いのおっさんとカウンターで隣同士になると不思議な雰囲気になるんですよ」。そう話す2代目店長の石崎さん。「酔ったジャズ好きおやじの話を、ふわっとした女の子が聞いているんですが……わっかんないだろうな~(笑)」。
ま、かつてのジャズ喫茶みたいに眉間にしわ寄せてアルバート・アイラーを聴いていた時代じゃないからね。
50歳の石崎店長と昭和談議に花が咲き、気がつけばダブル3杯目の氷がカランと鳴った。かかっていたのはリー・モーガンのサイドワインダーだったかな。このあたりで記憶が途切れている。こうやって原稿を書いているってことはあの急で狭い階段から落ちずに済んだということか。
(藤井優)
○ニュー魚寅 大田区西蒲田7-6-1
○直立猿人 大田区西蒲田7-61-8