島崎俊郎さんが68歳で他界…インフルエンザ感染と心不全をつなぐ「点と線」

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突然死した若者は10%が心筋炎

 島崎さんは、亡くなる1週間ほど前から風邪気味で体調が悪く、その後インフルエンザが判明して自宅療養していたという。一般論として風邪やインフルエンザから心不全に発展する恐れはあるのか。

「インフルエンザは気道の感染症ですが、そこから二次的に肺炎を起こすと、全身の酸素量が低下。心臓は、低酸素状態を脱しようと、脈を速くするため、心臓への負荷が大きくなります。これとは別に肺炎の炎症反応が心機能を抑える方向に働くこともあり、心臓へのダメージはさらに増大。もし感染者が弁膜症など心臓そのものに異常があると、急性心不全を招く可能性があります。特に高齢者で心臓に異常がある場合、呼吸器感染症は急性心不全のリスク因子です」

 インフルエンザ感染から推測されることが、もうひとつあるという。

「インフルエンザや風邪などでウイルスに感染すると、それが巡り巡って心筋に感染して心筋炎を起こすことがあります。これも発症から30日を境に急性と慢性に分かれ、急性心筋炎だと突然死のリスクが高く、厄介な病気です」

 2019年の調査で10万人当たりの心筋炎の有病率は、35~39歳の男性で6人、女性で4人。年齢が上がるにつれて増えて80~84歳の男性で同63人だった。患者数としてありふれた病気ではないものの、このところ上昇傾向にあるだけに怖いだろう。

 突然死した若者を解剖した結果、6~10%に心筋炎が認められたという報告もある。さらに前述した心筋症は、心筋炎との関係も指摘されていて、心筋が薄くなるタイプの拡張型心筋症では、14~33%に心筋炎が認められたとする報告もあるという。突然死するような急性も、拡張型心筋症のような慢性も、何らかのウイルスに感染することによって心臓にも悪さをしていることがうかがえるのだ。

■風邪の初期症状を放置すると…

 心筋炎の原因は、ウイルスのほか細菌や薬、関節リウマチをはじめとする膠原病、免疫異常などが知られる。ウイルス性だとすると、どんなウイルスがあるのか。

「心筋炎の原因ウイルスは、風邪や胃腸障害を起こすウイルスとの関係が深い。手足口病やヘルパンギーナの原因として知られるコクサッキーB群ウイルス、プール熱を起こすアデノウイルスが典型で、ほかにインフルエンザウイルスやC型肝炎ウイルス、そして新型コロナウイルスやコロナワクチンもあります。コクサッキーとアデノは、子供の風邪のウイルスとして有名ですが、成人が感染すると、のどの痛みと発熱が主な症状で、『単なる風邪』と放置されやすく、まれに心筋炎に進展することがあるから侮れません」

 そんなウイルスが心臓に感染したら、症状はどうなのか。

「心筋炎の初期症状は、発熱や悪寒、頭痛、筋肉痛、倦怠感、吐き気、嘔気、下痢などで風邪によく似ています。その後、数時間から数日で心不全に移行。血流の停滞によって息切れや呼吸困難になりやすくなりますが、最初のうちは階段の上り下りや急いだりしたときで安静時は何ともないことも珍しくありません。さらに悪化すると、安静時や就寝中も息苦しさを感じます。そのほか疲労感や冷え、むくみなども典型です」

 心筋炎の原因ウイルスや症状を知った上で、島崎さんの経過を振り返ると、あくまでも推測で断定はできないものの、心筋炎と符合する部分が少なからずあるだろう。怖い心筋炎を食い止めることはできないのか。

「肺炎も心筋炎も、ウイルス感染が原因になることが多いので、手洗いやうがいなどがとても重要。その中でインフルエンザウイルスも一因で、インフルエンザのワクチン接種も欠かせません」

 島崎さんが亡くなる前の東京は、寒暖差が大きかった。

 亡くなる3日前からの最高気温は15.2度、14.3度と日中は比較的過ごしやすい温度だったが、前日は真冬並みの10.3度に低下。そして倒れた日は16.4度と再びポカポカ陽気になっていた。

「風邪やインフルエンザでの発熱によって脱水した状態で大きな寒暖差の影響が重なると、心筋梗塞のリスクが高まります。この時季は乾燥による脱水もあるので、こまめな水分補給のほか室内の加湿、上着やエアコンによる寒暖差対策も必要です」

 今年は、長引くコロナ禍が明けて、コロナ禍前の年末に戻っている。通勤電車は混雑し、街は賑わう。感染しやすい環境が整っている上、異常ともいえる寒暖差が続き、今週末は再び気温の上昇が見込まれる。島崎さんの死を教訓に健康には十分注意したい。島崎さんのご冥福をお祈りします。

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