日本人の賃金を上げるために「労働組合」をつくる! 実は従業員と会社の双方にメリット
かつての栄光は見る影もない。サマンサタバサジャパンリミテッドが「従業員の冬季賞与不支給に関するお知らせ」(12月12日付)を公表した。ヒルトン姉妹やミランダ・カー、蛯原友里らをモデル起用するなどして拡大路線を歩んできたが、近年は業績が低迷。従業員の待遇も落ち込んでいる。
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サマンサタバサの従業員の平均年間給与は353万円(従業員数1027人、平均年齢32.1歳)。日本の平均458万円(国税庁=2022年分)と比べても残念ながら低賃金の部類に入ってしまう。
同社は現在、コナカの連結子会社として経営再建中。有価証券報告書には「労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております」と記されている。
一方、海の向こうからは景気のいい話が聞こえてくる。ゼネラル・モーターズ、フォード、ステランティス(クライスラー)の従業員らでつくる全米自動車労働組合(UAW)が約1カ月半のストライキに耐え、2028年までの4年半で25%の昇給を勝ち取った。これにより工員の最大時給は42ドルほど(約6000円)、初任給も最低30ドルほど(約4300円)に上がる。
法律で定められた米カリフォルニア州のファストフード店員の最低時給が22ドル(約3200円)なので、自動車会社の初任給はやや上回る程度だが、10年ほど前までベテラン工の平均時給が28~29ドルだったことを思えば、賃金は確実に上昇している。ちなみに、業績好調のゼネラル・モーターズCEOの昨年の役員報酬は3410万ドル(約48.5億円)とケタ外れだ。
「全米自動車労働組合は1935年の設立で、全米有数の規模を誇る労働組合(ユニオン)のひとつです。従業員個人では弱くても、団結することで労働条件を改善していくことができます。組合をつくることで会社と従業員の双方にメリットがあるのが理想。従業員の意見を使用者側が吸い上げることでイノベーションが起き、業績が上がるもの。そのためには御用組合では意味がなく、活動状況が重要です。ダイハツの労働組合がもう少しちゃんとしていれば、あのような不祥事は避けられたはずです」(特定社会保険労務士・稲毛由佳氏)
物価上昇で暮らしに困っているのは何も日本に限らない。労働組合の重要性は、それが“ある”ことで使用者に意見が言え、労働条件がよくなることにある。労働組合法は第1条で「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進する」と明記し、使用者が好き勝手できないようクギを刺している。
もっとも、かつてのように左手を腰に当て右手を突き出して「がんばろう!」と声を張り上げるスタイルは今の時代にははやらない。もう少しスタイリッシュで、労使双方が発展できるのが理想的。メジャーリーガーが高給なのは選手会(労働組合)がしっかり機能し、交渉の“プロ”が粘り強く待遇改善を求めてきたからだ。
ところが、日本の労働組合の組織率は下がるばかり。厚労省が先日公表した「労働組合基礎調査」によると、組合に加入している働き手の割合は推定16.3%。統計開始以来、過去最低となった。内訳を見ると、従業員1000人以上の大企業の組織率は39.8%と高いが、従業員100~999人の組織率は10.2%、99人以下に至っては0.8%しかない。
さらに女性だけを見ると推定加入率は12.4%と下がってしまう。先述のサマンサタバサも約9割が女性従業員という会社だ。