トリチウムの除染に成功したものの…共同研究者が明かした懸念と新たなアイデア

公開日: 更新日:

 第1原発の敷地内にたまる処理水の量は約130万トン。1時間で数グラムしか分離できなければ、数十年かかっても全く追いつかない。除染技術の原理を得ても現場では使えないということだ。

■技術の発展に向け迫られた選択

「処理できる量の増加」と「高い分離効率の維持」──。さらなる技術の発展に向け、研究チームは選択を迫られた。

「フィルターにこだわるべきか否かです。まるでアルミの板に蒸気を通す感覚で、処理量を増やすことは困難です。研究主導者の井原辰彦教授(当時)は結局、多孔質材の持つ吸着・分離特性を利用する考えを維持しながら、別のシステムを選ぶことにしたのです」

 それが、トリチウム水を残す多孔質体を顆粒状にするというアイデアだ。

「例えが適切ではないかもしれませんが、『宇宙くじ』ってご存じですか? あのように下から蒸気を吹きつけ、渦を巻く顆粒にトリチウム水を吸着させるイメージです。粒の素材は明かせませんが、フィルター素材を用いる装置の時とは別の民間企業と提携。処理量を飛躍的に伸ばすために、その企業の既存システムへの適用を目標に、素材選びや処理性能試験の共同研究を進めることにしました」

 ところが、この斬新なアイデアは思わぬ壁にブチ当たってしまう。 =つづく

(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  2. 2

    20代女子の「ホテル暮らし」1年間の支出報告…賃貸の家賃と比較してどうなった?

  3. 3

    「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上

  4. 4

    【埼玉・八潮市道路陥没「2次被害」現場ルポ】発生2週間、水は濁り死んだ魚が…下水放流地で見た河川の異変

  5. 5

    菊乃井・村田吉弘さんが日本食の高級化に苦言…「予約が取れない店がもてはやされるのはおかしい」

  1. 6

    「高額療養費制度」見直しに新たな火種…“がん・難病増税”に等しいのに、国家公務員は「負担上限」据え置きの可能性

  2. 7

    “ホテル暮らし歴半年”20代女子はどう断捨離した? 家財道具はスーツケース2個分

  3. 8

    「ホテルで1人暮らし」意外なルールとトラブル 部屋に彼氏が遊びに来てもOKなの?

  4. 9

    「フジ日枝案件」と物議、小池都知事肝いりの巨大噴水が“汚水”散布危機…大腸菌数が基準の最大27倍!

  5. 10

    鬼怒川温泉の渓谷に張り付く巨大廃墟群を探る…残された「バブル遺構」が物語るかつての栄華

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  3. 3

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  4. 4

    ヤクルト茂木栄五郎 楽天時代、石井監督に「何で俺を使わないんだ!」と腹が立ったことは?

  5. 5

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ

  1. 6

    菜々緒&中村アン“稼ぎ頭”2人の明暗…移籍後に出演の「無能の鷹」「おむすび」で賛否

  2. 7

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  3. 8

    ソフトバンク城島健司CBO「CBOってどんな仕事?」「コーディネーターってどんな役割?」

  4. 9

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  5. 10

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ