近視がよくなるヒントは「外遊び」にあり 台湾での取り込み効果が世界で広がる
台湾は発症率半減、進行も抑制
近視の予防や進行抑制とはどういうことか。そのヒントが台湾の取り組みにあるという。窪田氏が続ける。
「台湾や韓国、シンガポールなどでも20歳以下の9割が近視という報告もあります。その状況に国としていち早く対策を行ったのが台湾です。10年から台湾教育部などが主導して、小学校を対象に1日2時間以上の屋外活動を導入。これは一度にまとめて2時間ではなく、休み時間の外遊びや屋外での体育などを合計した取り組みです。13年に台湾南部で行われた屋外活動の調査では、近視の発症率が半分に抑えられたほか、進行が大幅に遅くなるという結果も示されています。こと近視対策において台湾は世界をリードする国のひとつです」
台湾で近視対策に積極的な小学校では、算数や国語などの授業も屋外で行ったり、読書やゲームを30分したら、10分は目を休ませる「3010運動」が広がったりしている。
台湾の成果を目の当たりにした中国も18年、近視削減の数値目標を策定した国家計画を公表。その中に1日2時間を目安にした屋外活動も盛り込まれている。北京市では、学校の授業のうちデジタル機器の利用時間は全体の30%以下。中台関係が緊迫化する中、台湾の成果をこれだけ大胆に取り入れるのは、中国も近視対策に力を入れている証しだろう。
しかし、日本は近視対策が遅れている。その状況を打開しようと窪田氏はこのほど「近視は病気です」(東洋経済新報社)を上梓。子供に近視が急増する現状に警鐘を鳴らしている。では、どうするか。具体的な対策を聞いた。
まず台湾の取り組みで分かる通り、積極的な外遊びや散歩だ。
「カリキュラムに組み込まれている台湾の子供なら1日2時間の外遊びは難しくありませんが、日本で毎日2時間を確実に続けるのは大変だと思います。それでも積極的な外遊びや散歩はとても大切です。そうすると、自然と遠くを見ることになります。近くを見る作業がもっとも近視を進めるので、たとえ屋外でもスマホを見ては意味がありません」
40代や50代でも近視が進むいま、大人も屋外活動が重要だ。
「豪州の研究では、屋外活動は大人の近視抑制にも効果があることが報告されています。日中の外出時は、目的地の1駅手前で電車を降りるなどして、なるべく日を浴びながら歩くことです」