高齢者の生活度を左右する「デジタル適応力」…最新調査結果を原田曜平氏が分析
具体的なPR戦略の違いは?
調査結果を踏まえて原田氏は、高齢者の特徴を8つに分類している。
①健康意識が高く、レジャーを楽しむ「引退人生謳歌おじ」
②社会貢献意欲の高い「ボランティアおじ」
③ミーハーで美容意識の高い「生涯アクティブウーマン」
④介護の合間にメディアで息抜き「老老介護者」
⑤孫が唯一の楽しみ、LINEで家族とつながる「世代間デジタル」
⑥家族に依存し家族消費を行う「家族経由デジタル」
⑦低意欲・少コミュニティー「孤独デジタル難民」
⑧介護施設で生活が完結する「非自立デジタル難民」
それぞれの詳細は著書に譲るが、こうしてみると一口に高齢者といってもそのイメージはかなり違う。①~⑤がPCやスマホを保有する“デジタル高齢者”で、⑥~⑧がデジタル難民になる。2000年代前半にマーケティング戦略として「アクティブシニア」が失敗したのは、これらをひとくくりにしたためだという。
前述した通り高齢者人口はこの先も拡大し、高齢者市場も膨張する。その攻略は今後、企業の業績を左右する大きなテーマだろう。
「『引退人生謳歌おじ』も『ボランティアおじ』もデジタル適応力が高いのは共通していますが、可処分所得の違いから消費行動はまったく違います。片や旅行やゴルフを思い切り楽しむのに対して、片やボランティアを主宰したりメンバーとして加わったり。こうしたデータを踏まえて企業が広告を打つなら、前者の高齢者には『生涯レジャー』を訴求すると効果的で、後者には『売り上げの一部を難民に寄付』といった施策が響く可能性があります。『ボランティアおじ』は可処分所得が低いため、『友人や家族の購入で割引』というPRも目を引くはずです」
顧客となっている高齢者が、どんな属性を持っているのか。それによって①~⑧のどれに該当するかが分かれば、おのずと企業の戦略も変わってくるだろう。
「現役世代にはそういう分析が細かく行われていますが、高齢者はほとんど手つかずでした。今後、高齢者市場の開拓を目指す企業は、高齢者のデジタル適応力によって特徴を分析すると、戦略の糸口が見えてくるはずです」
その開拓戦略が実を結べば、ライバルに差をつけるチャンス。要チェックだ。