「土用の丑の日」今年は7月24日と8月5日 飲食のプロも通う老舗ウナギ店を堪能する
土用は、季節の変わり目のおよそ18日間のことで、春、夏、秋、冬に4回ある。その期間にあたる丑の日が、土用丑の日だ。その日にウナギを食べるようになった由来は諸説あるが、いずれにしてもこう暑いと、ウナギで精をつけることは理にかなっている。この夏の土用丑の日は7月24日と8月5日。そこで日刊ゲンダイコラム「飲食のプロが見つけたバッカスがいる店」などに登場したウナギの名店を紹介しよう。(取材協力・キイストン)
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■330グラム以上の青ウナギを厳選する
ウナギは、天然モノと養殖モノに分けられ、天然モノは冬眠に備えて栄養を蓄える初冬が旬。これに対して養殖モノは、夏の最盛期に合わせて飼育されるため、まさにいまが旬だ。
そんな養殖モノの中でも、最高級に位置づけられるのが青ウナギで、小田原にある昭和53年創業の「うなぎ亭 友栄」は青ウナギのうち通常の1.7倍近い、330グラム以上のものを厳選しているとあって、ウナギ好きを引きつける。
店の駐車場には県内ナンバーはもちろん東京や静岡、山梨のナンバーも目立つ。この店をプッシュしたのが、SEED-TANK代表の古里太志氏だ。
「地下100メートルからくみ上げた湧水は1年を通して15.8度と一定。そのいけすで数日、ウナギを飼うことで茶色がかった背が青くなるそうです。そのうな重をいただくと、たっぷりとしていながら、脂はサッパリ。その日の脂の状態を見極めてタレを4度づけするようですがまったくしつこさはありません。小田原方面に出かけるときは必ずお邪魔したいお店です」
うな重(6600円)のほか、割きたての肝(1000円)もおすすめだという。
神奈川県小田原市風祭122
電0465-23-1011
10~16時(LO)
休み 木・金
約150年の熟練技で幻の「共水」を
「創業は明治8年で、149年の歴史を受け継いでいるのが5代目の鴛尾明さんです。代々受け継がれた技術やタレの味を守りつつも、どんどん新しいものを取り入れていて、とても刺激を受けます。その具体的な形のひとつが『共水うなぎ』で、とてもおいしいですよ」
そう言って日本橋の老舗ウナギ店「高嶋家」をプッシュしたのは、熟成肉とシチリアワインに力を入れる洋食店「せいとう」代表の城麻里奈氏だ。「共水うなぎ」は大井川の伏流水でじっくりと育てられたウナギで、取扱店舗は東京や千葉、埼玉など関東を中心に40軒ほど。
「幻」といわれるようにその味わいは、ほかの養殖モノとは一線を画す。高嶋家のうな重をごはんと一緒に口に運ぶと、一般のウナギよりウナギそのものの味が濃いことに気づく。
一般の養殖は、半年から1年ほどで出荷されるが、「共水うなぎ」の養殖期間は平均1年半。最長で30カ月に上るのだ。さらに養鰻池には山土が敷き詰められ、天然に近い環境で四季を演出。手間暇を惜しまずに育てられた一匹に、150年近い老舗の技が施されたうな重(5200円)は、ウマいに決まっているだろう。
店の一室には、ラストエンペラー愛新覚羅溥儀の弟・溥傑の書が飾られている。溥傑が店のウナギを好んでいたそうで、3代目のときに書を寄贈されたという。歴史を感じる老舗でウナギをいただくのも悪くない。
東京都中央区日本橋小舟町11-5
電03-3661-5909
11時30分~14時、17時~21時30分
休み 日・祝
三河一色産を関西風でサッパリといただく
夏は踊りとともに始まり、踊りとともに終わるといわれる。日本三大盆踊りの1つ「郡上おどり」が名高い岐阜県郡上市八幡町だ。町の盆踊りは7月上旬から9月中旬にかけて30日以上にわたって行われる。通常は22時半から23時に打ち止めだが、8月13~16日の4日間は夜通し踊り続けるのが名物だ。
風情ある町の中心部を流れる吉田川は岐阜の名水50選に認定。名水の町でもあり、ウナギの老舗「美濃錦」は144年の歴史を刻む。この店の大ファンが「和食麺処サガミ」や「味の民芸」などを展開するサガミHD社長の大西尚真氏だ。
「店には自前の井戸水を利用するいけすを備え、そこで三河一色産のウナギを数日、放つことで青ウナギになります。焼きは関西風で蒸しませんから、ウナギを口に運ぶとサッパリとしたウナギの風味が口いっぱいに広がるのです。創業以来、つぎ足しで受け継がれたタレは東海地方らしくやや甘めで、それが地元の郡上米によく絡んでとてもおいしい。この時季は、天然の郡上アユもおすすめです」
うな重は4800円。食べ進めると、ご飯の奥にウナギがもう1枚。この料金はコスパ抜群だ。
岐阜県郡上市八幡町殿町160
電0575-67-0001
11~14時、16~20時
不定休
1本300円~!串焼きと一品料理を楽しむ
ウナギというと、高価なイメージが強い。しかし、安く提供する店もある。自由が丘駅北口から都立大方面に歩いてすぐの「ほさかや」は1950年創業で、ランチのうな丼は何と1700円。夜の営業が始まる16時に合わせて連日、行列ができる。その人気店に通うのは、オイスターバー「PESCADERIA」や焼き肉店「まんぷく」などを手掛けるテイクファイブ社長の遠山和輝氏だ。
「夜はご飯がなく、ウナギの串焼きと一品料理を楽しむ飲み屋さんになります。たとえば、う巻きや八幡巻、煮こごりの3点盛り(600円)やレバーの酒蒸し(300円)をアテにビールを飲んだら、串焼きという流れです。ウナギの串焼きとは、焼き鳥のようにウナギの部位ごとにまとめて串打ちしたもの。からくり焼(400円)は身の部分で、きも焼(300円)は内臓を巻き付けています。ひれ焼(300円)は背びれで、かしら焼(300円)は、さばいた数匹分の頭をまとめて焼いたものです」
名物の蒲焼は1700円、塩焼(400円)はいわゆる白焼きでワサビでいただく。ビール大瓶700円、焼酎450円だから食べて飲んで3000~4000円ほどか。
「ウナギは串焼き屋さんに限ります」
遠山氏が強調するのも納得。極楽の店だ。
☆ ☆
暑い暑い夏は、まだまだ続く。好みのウナギ店で精をつけ、つらいシーズンを乗り切ろう。
東京都目黒区自由が丘1-11-5
電03-3717-6538
11時30分~14時、16~21時
休み 日曜
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