兵庫県議会は斎藤元彦知事への不信任案提出…パワハラ男の「心の闇」を精神科医が分析
■家庭の厳しさも甘さもどちらもリスク
では、自己愛性パーソナリティー障害でパワハラはじめトラブルを招く人は、どんな特徴があるのか。吉竹氏に聞いた。
幼い子供は、両親におやつやおもちゃをおねだりする。
おやつは買ってもらえても、高価なおもちゃは「ダメよ」と拒否されることもあるだろう。
それで、遊びに来た祖父母に改めておねだりするのは、どこの家庭でもよくある光景だ。
「厳しさと甘さは相反する要素で、この病気との関係でどちらか一方に極端に偏った家庭はもちろんよくありません。しかし、母は厳格、祖父は甘いなど、ほかの家族は健全でも一部が極端で、子供がその極端な家族の影響を受けると、自己愛が歪められる可能性があります。たとえば、『こんな成績じゃ○×中学に受からないわよ』と毎日毎日、母親に叱責され続けた子供は、勉強ができない自分を否定し、理想の自分を追求し続ける傾向があります。それで大人になると、学歴やステータスで周りを判断するようになるから、少しでも相手の学歴などが低いとバカにするのです。逆に家族に極端に甘い人がいると、過大評価や誇大感から自分の特別性を信じるようになり、何でも自由になる生活で、他者への共感性が欠如します」
■東大や早慶でも満足できず学歴格差に敏感
斎藤知事は地元の名士だった祖父の影響を強く受け、不自由のない幼少期を過ごす。
しかし、中学受験では志望校の六甲学院中に不合格で、愛媛の愛光中学、高校を経て1浪の末に東大へ。
大学でも留年して、総務省のキャリア官僚になっている。
「東大合格者ランキングをにぎわすような全国の名門校は、“少なくとも旧帝大に合格したい”といった環境が少なからずあります。そんな特殊な環境で育つと、たとえ東大生でも現役と浪人とでは大きな差で、そのギャップが劣等感として心に刻み込まれることもある。そもそも名門校を目指す過程でも、中学や高校の受験という試練があり、第2志望や第3志望での入学だと、スタート時点で劣等感を抱いている子供も少なくありません。そういった受験などの失敗によるストレスから自己愛をこじらせる学生もいるのです」
世間的に早慶は名門だが、有名進学校出身者だと、受験に失敗して“仕方なく”進んだケースもあるだろう。
「こじらせた学歴感情があるのは意外と東大や早慶など超エリート大出身者に多い。そんな感情を引きずったまま社会に出ると、より下位な学歴やステータスの人へのパワハラを生み、より上位のステータスを求める原動力となるのです」
低い学歴をバカにするのとは逆だが、初対面の人とのあいさつでわれ先にと学歴を披露するのも、自己愛性パーソナリティー障害の症状のひとつで、称賛を渇望することの表れだ。褒められて優越感にひたり、弱い自尊心を保つという。
■優秀でもアイデアが集まらず、余裕がない
「自分の行動によって周りがどう思うか、どういうことを求められているかが分からないので、つねに自分本位で自己中心的です。それなりのキャリアを積んだ人なら、事務処理能力は優れていても、自分のアイデアだけに頼り、周りの意見を見下すので、意見が集まらずに全体としての仕事ぶりは余裕がない。中間管理職が率いる部署や組織がそんな状況なら、その上司は自己愛性パーソナリティー障害で職場のトラブルを招いている可能性があります。上から目線の物言いや共感力のなさが、周りとの関係においてパワハラになるのですが、自分が悪いことをしているという認識もないのがこのタイプです」
斎藤知事らへの告発を行った元局長は、その後親族宅で亡くなった。元局長への対応を問われた百条委員会の証人尋問で道義的責任を問われた斎藤知事は、こうこたえている。
「道義的責任というものが何か分からない」
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議会が解散した場合の選挙費用は16億円に上るという。パワハラ知事の身勝手なふるまいでこれだけの血税がムダになるとすれば、県民はますますやりきれないのではないか。