武田信玄を守護…一子相伝の武術が源流「影武流」を体験 記者が悶絶した500年の重み
恋人をエスコートするように
さらに驚きだったのが、立った状態の人を文字通り「動かす」練習だ。棒立ちの人の腰に手を添えてそっと動かすだけなのだが、押される側は抵抗するため簡単には前に動かない。「例えば、動かす相手を『イス』だと思って力まずに自然に動かしてみてください」(雨宮師範)との指示通りにトライするも、そうやすやすとはいかない。
練習相手が女性だったため、雨宮師範から「邪念があるんじゃないですか?(笑)」と冷やかされつつ、「イスだと思わずとも、恋人をエスコートするように」とのアドバイス通りにやってみると、こちらの緊張が抜けたのか、相手にうまく力が伝わり動かすことができた。意識の仕方ひとつで変わるとは、奥が深い。
最後に礼で稽古を締めた後、日刊ゲンダイ記者は雨宮師範が「鎧通し」と呼ぶ当身技を体験。「波紋」「打震」「鞭打」「穿打(または穿弾)」の4種類のうち、「波紋」と「穿打」を1割程度の力で胸に打ってもらった。「波紋」は打ったところから波が広がる、「穿打」は打ちぬくイメージだ。
筋トレが日課の日刊ゲンダイ記者は「まあ、耐えられるだろう」とタカをくくっていたが、1発目の「波紋」を右胸に食らった瞬間、1秒前の自信は雲散霧消。「ゴフッ」という鈍い音と共に砲丸を打ち込まれたような重みが胸全体を襲い、痛みが波のようにみぞおちまで伝わってきた。「クッ……これが500年の重みか」と余裕を見せる間もなく悶絶した。
早くも戦意喪失だったが、1発で帰るわけにもいかない。ほとんど怯えながら「穿打」を受けると、今度は重さに加えて鋭い痛みが胸から背中に向けて貫通。胸から背中をところてんのように高速で押し出される感覚だった。
「鎧通し」をもらってから数日間、咳をしたり、はなをかんだりするたびに胸に痛みが。これが数々の格闘家も悶絶した浸透する技か……。
(高月太樹/日刊ゲンダイ)