“目の見えない精神科医”が「視力を失っても仕事を続けられる」と勇気づけられた瞬間

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 徐々に視野が狭まる病によって32歳で完全に視力を失いながらも、精神科医として10年以上にわたって患者さんの心の病と向き合っている人がいます。

 その名は福場将太さん。かつて「目が見えなくなったら医師は辞めなくてはいけない」と思っていましたが、その認識を変えた出来事がありました。初の著書「目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと」(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けします。

◇ ◇ ◇

 国家試験を乗り越え、めでたく精神科医として従事するようになって3年から4年経った頃のことです。視力の低下は続き、いよいよどんなに目を凝らしても患者さんの表情が見えない、どんなに拡大してもパソコンの文字も見えないという状態になりました。

 精神科の診療の大部分は患者さんとの語らい、外科のように手術をするわけではありません。とはいえ、「さすがに患者さんの顔が見えないし、自分で書類が書けないのはアウトだろう……」と考え、まだ新米ながら「引退」の二文字が頭をよぎりました。

 そんな時に、一緒に働く事務の方が、全盲の精神科医の存在をインターネットで見つけてくれ、その先生とコンタクトを取ったことで「視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる」という団体の存在を知りました。その総会が東京であるというので参加してみたのです。

■目が見えない医師は、案外たくさんいる
 
 するとそこには、目が見えない医師がいました。1人や2人ではなく、たくさんいました。しかも医師だけでなく、看護師、心理士、理学療法士、言語聴覚士などなど、目が不自由でも医療や福祉の仕事に従事している方が何十名もいたのです!

「目が見えない医師は自分だけじゃなかった!」

 このことは私の心を明るく照らしました。たくさんの仲間の存在に、勇気をもらいました。

 さらには、具体的な診察の進め方や勉強の方法、音声ソフトを使えばパソコン操作ができること、書類の所定の場所にズレずにサインできるテクニックなど、目が見えない状態で仕事を続けていくためのさまざまなノウハウを教えてもらいました。

 今思うと、病気が起こる確率を考えれば、医師の中にも目が見えない人がいてもおかしくないのは想像できたことです。

 ところが当時の私は、「目が見えない医師は自分だけだ」と思い込んでいました。いえ、思い上がっていました。そして、目が見えなくなったら当然、医師は続けられないものだとも。目が見えないと「レントゲンが見えない」「心電図が読めない」「カルテが書けない」と、「できないこと」ばかりにフォーカスしていたのです。

 何より「医師はあらゆることができて当たり前」「医師は完璧でないといけない」という固定観念が強くあったように思います。

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