谷中「乃池」の穴子寿司で蘇る四半世紀前の思い出
あっという間に8貫をペロリ
注文を受けたお姉さんが奥に入ると同時に予約の大先輩2人が入ってきてアタシの隣に。お通しでビールを飲んでいると、隣の大先輩が店長に「この間、大将とすれ違ったよ。元気そうだね、いくつになった?」「98です」。お~、まだお元気か。このタイミングで店長に話しかけた。
「実は25年ぶりに穴子寿司が食べたくて……」
軽く経緯を話すと、「ありがたい話だねえ、こうやって食いに来てくれる人がいるんだから」。もう一人の大先輩が会話に加わる。ほどなく穴子寿司が目の前に。黒光りするツメがたっぷりかかった穴子の握りが8貫。ひとつ口に放り込むと、ツメの甘みとコクが舌に広がると同時に、あぶったふわっふわの穴子がシャリとほどけて香ばしい。これはたまらない。サイコ~。「どう、うまいでしょ?」。大先輩がアタシの顔をのぞき込む。「死ぬほどうまいです」「死ぬこたあないよ(笑)」。そんなやりとりをしながら、あっという間に8貫をペロリと平らげてしまった。
役者を目指していた乃池さんが、ひょんなことから寿司職人に。現在の店を創業したのが昭和40年。穴子寿司を目玉にしたところ大当たり。休日は穴子寿司を求めて行列ができる。でも、穴子ばかりじゃないよ、今度はお好みでやらせてもらおう。
今年も読んでいただきありがとうございました。来年もよろしく!
(藤井優)
○乃池 台東区谷中3-2-3