シャープ(下)「さすが鴻海流」からの転落…液晶なきあとのブランドイメージとは
21世紀の入り口から2008年のリーマン・ショックまでの間、電機業界でもっとも輝いていたのはシャープだった。他社に先駆け液晶テレビへのシフトを果たしたことで業績を大きく伸ばすことに成功した。国内経済の低迷と円高のダブルパンチで苦しんでいた電機業界で、シャープは数少ない勝ち組だった。
ところがシャープに成功をもたらした液晶事業が、その後シャープを追い込んでいったのだから皮肉なものだ。
きっかけは、今年9月に液晶生産撤退を決めた堺の液晶工場(SDP)の建設だった。09年に誕生したSDPは、世界最大級の液晶パネルを生産できる能力があり、テレビサイズが大型化する中、液晶市場をリードすると思われていた。
しかし完成直前の08年にリーマン・ショックが起きて世界経済は失速、テレビ市場も冷え込んだ。加えて進む円高と、サムスンなど韓国・中国製の台頭もあり、シャープの液晶パネルは国際競争力を失っていく。
結果、SDPの稼働率は上がらない。それがシャープの経営を直撃し、13年3月期には5000億円を超える最終赤字に陥る。その後も赤字体質からは脱却できず、16年3月期にシャープは債務超過となった。その危機を救ったのが台湾の鴻海(郭台銘会長、当時)だった。