シャープ(下)「さすが鴻海流」からの転落…液晶なきあとのブランドイメージとは
鴻海はシャープを子会社化するとともに副総裁の戴正呉氏を社長として派遣する。この戴社長は徹底した無駄の排除と素早い意思決定を軸に再建を進め、16年度下期には早くも営業黒字に転換させる。「さすが鴻海流」。電機業界の誰もが戴社長の手腕に舌を巻いた。
ところが戴氏は最後でミスを犯す。2年前に社長の座を呉柏勲氏に譲るが、その直前、8割の株を売却していたSDPを買い戻したのだ。その意思決定には社内外から疑問の声が上がったが、戴氏は「将来のシャープに必ずよい決断になる」と押し切った。
それから2年、案の定、SDPはシャープのお荷物になった。
シャープは鴻海傘下で再建を果たした。しかしそれは無駄を排除した結果でしかない。液晶や半導体などの最先端デバイスの技術は日進月歩。競争力を保つには莫大な研究開発費を投じることが必要だ。しかし再建途上のシャープにその余裕はなく、完成当時は世界最先端だったSDPも陳腐化し、赤字を垂れ流すだけになっていた。SDPが液晶生産の撤退に追い込まれたのも、ある意味当然の帰結だった。