加藤勝信財務相が米トランプ政権に脅し? 米国債「売却含み」の危うい交渉カード
■橋本龍太郎首相の二の舞い
いたずらにトランプ政権を刺激することになりはしないか。米国債を巡っては、かつてホワイトハウスの逆鱗に触れたことがある。
1997年6月、橋本龍太郎首相が米コロンビア大学での講演後の質疑応答で「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」と発言。日米貿易摩擦を巡って米通商代表とやり合った経緯を念頭にジョーク交じりに語ったが、直後に米株や国債が急落。当時のクリントン政権は「売れば宣戦布告とみなす」とカンカンとなり、日本政府は火消しに追われたのだ。
以来、橋龍と同じ轍は踏むまいと、歴代トップは米国債への言及を“封印”。石破首相も米国債の取り扱いに関し「非常に機微な問題」と言って触れようとしない。加藤財務相は米国債を交渉カードにするとカッコつけちゃいるが、関税をかければ米国債を売ると受け取られかねず、トラの尾を踏む危うさをはらむ。
「トランプ政権は相互関税を発動した直後、90日間の一時停止を余儀なくされました。米国債の投げ売りにより、金利が急騰したからです。米国債を大量に保有する日本は米国の首根っこをつかんでいるとは言えますが、米国債の暴落を招くようなことはできないし、するつもりもない。『売るかもしれない』と脅しめいたことを言わざるを得ないほどに、米国から厳しい要求を突き付けられているのではないか」(埼玉大学名誉教授・相澤幸悦氏=経済学、金融論)
もっとも、米国の自動車関税に対し日米貿易協定「違反」すら指摘できない弱腰政権のこと。本気でケンカできるわけがない。