マスク氏が中国と“曲芸外交”? 2人の狙いは米国と世界をワンマン経営下の株式会社化すること
トランプが貿易や関税問題で中国とがっぷり四つの闘いに臨む裏で、マスクが中国首脳部と落としどころを探るといった曲芸外交も可能だ。利益とXの発言力を武器に、ロシアや欧州主要国とも渡り合える。
政府の役職と自分のビジネスで利益相反の恐れがあるマスクには、会社経営から一時手を引くべきだとの意見も米国内に強い。しかし、第1期政権時に家族の企業グループが経営するワシントンのホテルに海外の要人を泊まらせて、荒稼ぎしたトランプが気にとめるはずがない。
テスラの株価はトランプが勝利した後、2週間に40%近く上昇した。政治とビジネスの垣根がかつてなく曖昧な異形の政治形態が第2次トランプ政権だ。
すべてをワンマン経営下の株式会社化するのが狙いの2人にとって、国民は政府として奉仕する対象ではなく社員。グリーンランドへの恫喝やカナダへの傍若無人な発言からも分かるように、同盟国ですら関連会社のような存在なのだ。
分断と排除の政治と外交は続く。意に沿わず、利益をもたらさない相手にトランプとマスクは叫ぶだろう。
「おまえはクビだ」 (敬称略=つづく)
▽半沢隆実(はんざわ・たかみ) 1988年共同通信社入社。社会部記者を経てカイロ特派員、パレスチナ紛争、イラク戦争、アフガニスタンなどを取材。ロサンゼルス、ロンドン、ワシントンの各支局長を経て特別編集委員。