少ない予算を育成に 渡部暁「銀」の陰にスキー界の臥薪嘗胆
12日のノルディック複合個人ノーマルヒルで日本勢としては94年リレハンメル五輪の団体金、河野孝典の銀以来、20年ぶりのメダルをもたらした渡部暁斗(25)。その陰には、スキー関係者の並々ならぬ努力と艱難辛苦に耐える“臥薪嘗胆”があった。
89年までワールドカップ、カルガリー五輪、2度の世界選手権を経験したロシニョールのサービスマン清水英安氏は、「この銀メダルは渡部を支えるスタッフの努力も見逃せません」といってこう続ける。
「後半のクロスカントリーはスキー板とワックス選びが重要です。ワックスに関しては、板を滑らせるものと傾斜を上る際にはグリップさせるものを同時に使うので、ワックスマンの腕が大きく影響する。それにしても、近年の冬季五輪は、フィギュアやスピードスケートばかりが脚光を浴びてきました。ノルディック複合で銀メダルを取ったのは本当にうれしいです」
冬季五輪でスキー競技がメダルを取ったのは02年ソルトレーク・女子モーグルの里谷多英(銅)が最後。今回は高梨沙羅の女子ジャンプと自身上村愛子のフリースタイルスキーのモーグルにも光は当たっていたが、一方でメディアは相変わらず人気の男女フィギュアと長島、加藤のスピードスケート(500メートル)のメダル取りをあおっていた。スケート偏重主義の冬季五輪にあって、渡部の銀メダルで留飲を下げたスキー関係者は少なくない。