ライバル失速から一気の逆転 萩野公介「金」は冷静さの勝利
“和製フェルプス”に持ち前の速さに加えて冷静さも備わってきた。競泳男子の萩野公介(20=東洋大)のことだ。
21日のアジア大会男子200メートル自由形で、1分45秒23の日本新記録をマークして優勝。五輪同種目金の韓国・朴泰桓(北京)、中国・孫楊(ロンドン)の2人を抑え、アジア大会では自身初の金メダルを獲得した。このレースの45分後に行われた100メートル背泳ぎ決勝は53秒71で銅メダルだった。
萩野は「(朴、孫の)2人に比べたら実績がない。胸を借りるつもりだったので、1位になれるとは思っていなかった」と振り返ったが、レース内容は金メダリスト2人をしのぐものだった。150メートルは朴、孫から体半分ほど遅れて3位で折り返す。ライバル2人に先行を許しても萩野は冷静さを失わなかった。最後の50メートルに入り、2人のスピードが鈍ったのを見て「もしかしたら、いけるかもしれない」と一気に加速。最後の20メートルでライバル2人を抜き去った。
■精神的な余裕
今大会での複数金メダル獲得を目標に掲げ、7月には米アリゾナ州で高地トレ、筋トレを精力的にこなした。8月からはパン・パシフィック選手権(豪州)、大学選手権とレースを通じて実戦感覚を養った。多くのレースを経験して駆け引きも身に付けたのだろう。レース中でも相手の状態を冷静に分析した。競泳は水面に顔をつけながら泳ぎの動作を繰り返すため、他の選手の状態などを把握するのは難しいとされる。自分だけでなく、相手の泳ぎを分析できるようになったのは、萩野に精神的な余裕が生まれたからだろう。
スピード、スタミナに加えてクレバーさも身に付けた萩野。今大会は22日の200メートル個人メドレーも含めて残り6種目に出場予定で、今後もアジアのライバルを寄せ付けない泳ぎを披露しそうだ。