1205試合に出場して21盗塁 これ、密かな自慢です
「土壇場でよう打つよ、クセ者は。ほかの打者が打てない時に限って打つんだよ、ヤツは」
現役時代、長嶋監督には何度かお褒めの言葉を頂戴しました。
試合を決定づけるホームランを放ったとき、代打でサヨナラ安打を打ったとき。長嶋さんが喜ぶ顔を見るのは最高でしたが、それ以上にうれしかったのが、こんな言葉をいただいたときです。
「アイツにはサムシング(なにか)がある」
併殺崩しのスライディングや相手守備陣のスキをつく走塁……。マスコミに大きく取り上げられることのないそうした地味なプレーこそ、「クセ者」の本領発揮だと思ってやってきました。
現役14年の一軍通算成績は打率.262、66本塁打、378打点。誇れるような数字はありませんが、密かに胸を張りたいのが盗塁数です。
1205試合に出場して21盗塁。いや、少ないのは分かっています。鈍足ですから、これはしょうがない。でも、ゲームの流れを変えたり、勝利に直結する盗塁が少なくなかったと自負しているのです。狙って走ったのはほとんどが三塁へのスチール。投手のクセを盗み、捕手の配球を読む。足は遅くとも、きちんとした準備とスタートを切る勇気さえあれば、バッテリーの警戒心が薄れる三盗は、成功する確率がグンと高まります。