円熟26歳の錦織圭にチャンの「努力の哲学」は必要なのか
今年の全豪オープンの準々決勝、やはりジョコビッチに敗れた錦織は、なかなか記者会見に現れなかった。マッサージで遅れることはあるが、チャンの反省会が30分も続いたという。
「いつも、あれこれ怒られます。怒る理由も分かりますが」
本来は開放的な男が、怒ってばかりで笑わないコーチのもと、はつらつとしたプレーが見られなくなった。
マイケル・チャンは、ピート・サンプラス、アンドレ・アガシらの米国黄金時代に活躍した選手だ。ボリス・ベッカーがジョコビッチのコーチに就任し、ステファン・エドバーグがロジャー・フェデラーに、イワン・レンドルがアンディ・マレーに就いて〈レジェンドコーチ〉と呼ばれ、チャンもそのひとりに数えられる。だが、チャンのメジャー制覇は17歳だった89年の全仏だけで、実績では他のコーチとは比べものにならない。
175センチという小柄な体格にムチ打った努力の哲学が、体力強化に貢献しても、多彩な才能を引き出せるかどうかは別だ。精神力も技術力も十分の選手に、試合後の説教がどれだけ必要だろうか。