覇気なく初日黒星…休みたくても休めない稀勢の里の憂鬱
相撲評論家の中澤潔氏は「負けた2横綱3大関の中で、一番悪い内容だった」と、こう続ける。
「相撲用語で、立ち合いからすぐに二本差されることを『バンザイ』と呼ぶ。今日の稀勢の里は、バンザイをしに土俵に上がったのか、という相撲だった。覇気も何も感じない。拍子抜け、ブサイクな相撲です。稀勢の里は今場所の出場にあたって、どこまで真剣に考えたのか。土俵に上がれば何とかなる、という程度の甘い気持ちがあったのではないか」
自らの存在が相撲協会に莫大な利益を生み、角界が活況を呈していることを考えれば、稀勢の里には、「休んでいられない」という思いがある。八角理事長(元横綱北勝海)も「横綱は出場するのが務め」と話しており、角界全体にそうした雰囲気があるのは事実だ。
その結果が、この日の惨敗。多額の懸賞金目当てに対戦相手は目の色を変えるし、平幕にすれば金星のチャンスだ。中途半端な気持ちで崩せるほど、モンゴル勢の牙城ももろくはない。ケガで万全ではない状態で「横綱の務め」を果たせるほど甘くはないのだ。仮に連敗が続けば休場は必至。2場所連続で途中休場となれば、それこそ進退問題にも発展しかねない。
支度部屋では報道陣の問い掛けに、ほとんど言葉も出なかった稀勢の里。体より先に、心が悲鳴を上げるかもしれない。