「パパが一緒じゃなければ」EA入りに際しで母親が言った
張本に白羽の矢が立ち、ファミリーは揺れた。野球やテニスにはさまざまな修業機会があっても、アマチュア種目には公的支援は欠かせない。母親の凌さんは言う。
「私自身が10歳から寮生活をしてつらい思いをしました。智和を手放したくなかったし、プロも反対だった。東京は仙台から遠くないけど、パパが一緒じゃなければ絶対に許さないと言いました」
■日本国籍が条件
EAに参加するためには、日本国籍が条件だ。張本は中国との二重国籍で、こうした例は海外では珍しくなく、スポーツの代表は必ずしも国籍と一致しないが、JOC内の組織では国籍取得は必須だった。また、全日本選手権で切磋琢磨もできない。勉強か卓球かの選択は仙台か東京か以上に、中国か日本かという問題として重くのしかかった。決断したのは、東京でのオリンピック開催の雰囲気が漂いだした頃。
「はっきり決めたのは、智和が小学3年のときです。『お父さん、ぼくはオリンピックで金メダルを取りたい』と言った。私たちは中国人ですが、子供たちは仙台で生まれ育ち、仲良しの友達もたくさんいる日本人。そんな気持ちが伝わって、それで決めた」