白星発進の稀勢の里 “星勘定”せずに相撲が取れるかがカギ
満員御礼の観衆、国技館に残っていた力士、親方衆も、固唾をのんで見守った。
大相撲9月場所初日、8場所連続休場明けで進退が問われている横綱稀勢の里(32)が、勢を下し、白星発進。今年1月場所2日目以来となる237日ぶりの勝利を手にした。
立ち合いで低く当たった稀勢の里は左下手を取ると、迷いなく寄り。勢の苦し紛れのはたきも意に介さず、一気に寄り切った。
待望の初日に、館内は大歓声。支度部屋に詰めていた報道陣の間からは、安堵のため息が漏れた。
稀勢の里はといえば、厳しい表情を崩さず、勝ち残りの土俵下でも口を「へ」の字に曲げたまま。
支度部屋では「集中してやるだけ」「自分の力を出すだけ」と、ぽつぽつと話し、2日目以降の取組に関しては「今日は今日なので」と答えた。
今場所の成績次第では、引退が避けられない和製横綱。対戦相手に加えて、自身最大の重圧とも戦うことになる。
この日、弟子の相撲を観戦していたある親方は本紙の取材に、「稀勢の話? 俺は別の一門だからあまり突っ込んだ話はできないけど」と前置きし、こう続ける。