著者のコラム一覧
山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

大船渡・佐々木が普通の高校生なら? 登板回避論争に思う

公開日: 更新日:

 しかし、そうはいっても、この判断を批判する声はやはり多い。確かに佐々木は高校野球で燃え尽きるべき投手ではなく、本人も当然その先のプロ野球を見据えているだろう。だから、佐々木を守るのは理解できるとしても、だったらそれ以外の多くの高校球児の思いはどうなる。実際、高校球児の多くは佐々木のような逸材ではなく、ごく普通の高校生だ。今夏が野球人生最後と位置付けている球児も少なくないだろう。ひとりの大エースを特別保護するあまり、その他大勢の「甲子園に行きたい」という思いに配慮せず、敗退行為とも取れるエース温存を選ぶのはおかしい、という意見だ。プロ野球がすべてではないのだから。

 ただし、これは見方を変えると、プロに手が届かない普通の高校生であれば、故障のリスクよりも「高校野球で燃え尽きたい」という思いを尊重するべきだ、とも考えられる。たとえば、高校卒業後は本格的に野球をやるつもりがないと主張する投手だったら、本人が望めばケガをさせてもいいのだろうか。

 私はこれが佐々木であろうとなかろうと、高校生の健康と安全を守るべき教育者であるなら、この「燃え尽きる」という考え方そのものに違和感がある。高校生が青春の大舞台で腕が折れようとも燃え尽きたいと思うのは理解できるが(だからこその若者であり青春だが)、だったら背中を押そうと考える教育者についてはよくわからない。

 教育者は格闘技に置き換えると、タオル投入を担う存在だと思う。格闘技は命に関わるから根本的に違うと言うなら、ケガは別にいいということなのだろうか。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    参院選で自民が目論む「石原伸晃外し」…東京選挙区の“目玉候補”に菊川怜、NPO女性代表の名前

  4. 4

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  5. 5

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  1. 6

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  2. 7

    我が専大松戸の新1年生は「面白い素材」がゴロゴロ、チームの停滞ムードに光明が差した

  3. 8

    逆風フジテレビゆえ小泉今日子「続・続・最後から二番目の恋」に集まる期待…厳しい船出か、3度目のブームか

  4. 9

    新沼謙治さんが語り尽くした「鳩」へのこだわり「夢は広々とした土地で飼って暮らすこと」

  5. 10

    石橋貴明のセクハラ疑惑は「夕やけニャンニャン」時代からの筋金入り!中居正広氏との「フジ類似事案」