炎鵬に力の差見せつける 貴景勝を支える“一人大関”の自覚
2人の力士が土俵に上がるや、今場所一番の歓声が上がった。
かたや175センチ、169キロの大関貴景勝(23)。こなた168センチ、99キロの前頭5枚目炎鵬(25)。力自慢の大関と機敏な小兵という人気力士同士の対戦が21日、結びの前に行われた。
1度の待ったを挟んだ立ち合い、もろ手突きを繰り出した大関を、炎鵬ははたき込みのごとく両手で払う。すかさず懐に潜り込もうとしたのだろうが、貴景勝もさるもの。片手の突きで小兵を吹き飛ばし、体重とパワーの差を見せつけた。食い下がる炎鵬をものともせず、最後も片手で押し出した。
「剛よく柔を断つ」相撲。この日は正代、徳勝龍が1敗をキープしたものの、貴景勝も2敗で踏ん張っている。優勝の可能性は十分ある。
今場所は上位陣が壊滅状態。2横綱は休場し、先場所大関から陥落した高安はすでに6敗と、最短での大関復帰は消滅した。さらにカド番の豪栄道も結びで宝富士に負け、7敗目。陥落にリーチがかかった。
白鵬と鶴竜はともに34歳。現役は長くはないだろう。近い将来、上位は大関貴景勝ただひとり、という事態となりかねないが、それはそれで悪いことばかりではないだろう。「地位や立場が人をつくる」という言葉もある。横綱不在の一人大関となれば、その分、責任も重大。危機感が貴景勝を刺激し、さらなる成長を促すこともある。