響き渡るプレー音…無観客だから分かる観客のありがたさよ
プロ野球オープン戦が無観客試合で行われている。やたらうるせえ太鼓も遠慮会釈のないラッパもない。
ピッチャーの投げるボールが、ブンと空気を切り裂く音が聞こえる。キャッチャーミットにブヮシンと収まる音が響く。ベンチで「オラオラオラ、バッタービビってるよ!」という声が響く。打てばカッキ~ンという音がこだまして外野手がグワシグワシと芝を蹴る音とともに、打球が外野席にガッコ~ンと跳ね返る音に続き、「ナイスバッチ!」と「ドンマイ!」が飛び交う。それ以外の音といえば空高くトンビのピーヒョロロと間延びした鳴き声だけ。スタンドにポツリと座った球団OBは「寂しいねえ」とため息をつく。
無観客試合というのは、本来のむき身の野球を肌で感じ直す絶好のチャンスである。
いろんなことが分かる。敵のベンチのあいつはきたねえヤジを飛ばす。味方のこいつは全然声を出さない。ああ、てめえのことしか考えてないんだな、と分かる。味方がチャンスのとき4番バッターが三振すると、監督が立ち上がる瞬間に括約筋が緩んで小さくする屁の音。ゴミ箱を叩いて球種を教えりゃすぐバレる。