プロ野球6.19開幕で大丈夫か?3人の感染症専門医に聞いた
常にボールを手に持つ投手と捕手は感染注意
東京医科歯科大の名誉教授である藤田紘一郎氏(感染免疫学)はまず、コロナ禍について、「コロナはサーズ(SARS)などと違い、感染経路が分からない感染者が多いのが特徴。感染しても症状が出なかったり、軽症の人もいる。現時点でコロナ抗体を持つ人は国民の10人に1人はいると考えられる。感染者がゼロになるのを待っていたら夏が終わってしまうが、抗体を持つ人が増えればコロナ禍は自然と落ち着いてくるでしょう」と分析。
■まずは自然免疫力を高める
その上で、「6月中にも開幕できる可能性はある。自粛にこだわらない方向で考えたいと思っていますが、プロ野球界がその準備と覚悟ができるかどうか」と、こんな条件を挙げた。
「免疫力が高いアスリートは、現時点で症状が出ずとも感染している可能性はある。練習試合が始まれば、両チームで100人近い人が集まるわけで、その際にコロナに感染する選手、関係者が出てくると思った方がいい。そこで慌てないように準備をすることが大事です。本来なら欧州の一部サッカークラブのように、選手、コーチ全員の抗体検査をやった方がいいと思うが、まずは『自然免疫力』を高めること。いくらアスリートとて、運動後には免疫力は低下する。食事は決まった時間に取り、暴飲暴食はしない。たばこは控える、試合後は外出せずにゆっくり休む、などとハッキリ決めることが必要です」
プロ野球界では最近でこそ、アスリート志向の選手が増えたとはいえ、酒やたばこを好む選手は少なくない。ただでさえ制限が多くストレスを抱えやすい環境で、果たしてそんな規則正しい生活が送れるのかどうか……。
■手に持つボールにもリスク
新潟大学大学院医歯学総合研究科の特任教授・田中純太氏(呼吸器・感染症内科)は、団体スポーツの観点から、こう指摘する。
「野球の場合はサッカーと比べると、選手の接触頻度が少ないなど、開催しやすいスポーツだと思う。ただ、団体スポーツでは“対人”でウイルスが伝播する危険がある。野球では主に投手と捕手が球を手に持つ。その際にどれだけウイルスが付着するかの実験がなく、何とも言えませんが、球を触った手をどうするのかというところ。とにかく球に触れた手を顔に近づけないことが大事。ついつい髪を触ったり、汗をかけば額をぬぐったりしてしまう。どんなに注意してもそうした行為を100%、抑えることはできないでしょう。伝播リスクが高くならないよう注意を徹底し、組織としていざという時に適切な判断ができるシステムをつくることが大事です」
3人の専門家の指摘に共通しているのは、全体練習や試合を通じて、コロナ感染者が出てくる可能性が高いということだ。そのリスクを背負って野球をやれるのか。プロ野球は重い決断を迫られそうだ。