中森や高橋も 高校ドラ1候補が軒並み進学に傾くコロナ異変
活動自粛、試合激減
「中森や高橋にも当然、プロ志向はある。しかし、今年に限っては、プロへ挑戦しようと決意を固めづらい環境にある」と、セ球団のスカウトはこう続ける。
「今年はコロナ禍によって、夏の地方大会、そして甲子園大会が中止になり、高校生たちは活動自粛を強いられるなど、まともに野球に取り組むことができなかった。各都道府県の独自大会が行われたものの、甲子園の交流試合は無観客開催での1試合のみ。多くの観衆がいるなかでの負ければ終わりというトーナメントの緊張感には程遠く、これでは実力も発揮しづらい。そのうえ、U18の開催も12月に延期された。高校生のトップ選手が同じ釜の飯を食うことでお互いが刺激を受け、プロ入りを決意するケースも多い。中森も高橋も、プロ入りしたい気持ちはあっても、プロでやれるという自信を得られる機会が極端に少ないからね」
スポーツライターの安倍昌彦氏は、この日の中森の投球についてこう見る。
「本人もコメントしていたように、七回以降は球の力が落ち、打球が前に飛ぶようになりました。コロナによる活動自粛の影響で、基礎体力の強化が思うようにいかなかったのかもしれません。これは、鍛えれば間違いなく身につくものですから、今後の伸びしろと捉えていますが、高橋にしても、例年の甲子園ならもっとアドレナリンが出て、さらに素晴らしい投球をしていた可能性は十分にあります」
■プロは大学、社会人優先も
実際、プロ側も高校生の評価に頭を悩ませているという。
「本来なら、編成幹部や全国各地の担当スカウトが一堂に集まり、全選手をチェックするが、甲子園に入場できるのは1球団2人まで。いわゆるクロスチェックができない。無観客開催だから、大観衆の中でどういうプレーをするのか、大舞台に強いのかという精神面も知ることができない。高校生の実力を見極めづらいのが正直なところ。球団によっては、すでに数年間のデータの蓄積があり、ある程度の評価が定まっている大学、社会人を重視するところも出てくるでしょう。中森や高橋がひとまず大学の4年間で実力を身につけたいという気持ちになるのは、致し方ない部分もある。松坂大輔ら過去の超高校級と言われた投手に比べたら、現段階での2人のレベルはだいぶ落ちるだけに、より大学に行ってからという気持ちになっているのではないか」(前出のセ球団スカウト)
今年のプロ志望届の提出期限は10月12日。あと2カ月の猶予があるとはいえ、コロナ禍は逸材の進路にも大きな影響を及ぼしつつある。
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