負けられない…長嶋監督が脳梗塞で倒れたことが枷になった
しかし、その願いはかなわず、中畑清ヘッドコーチが代行として指揮を執ることになりました。中畑さんはグラウンド外で率先して明るく振る舞い、僕ら代表メンバーをリラックスさせようと努めていました。本来なら誰よりもショックを受けていたのが中畑さんだったはずです。中畑さんにとって、長嶋監督はプロ入りしたときの指揮官。とにかく長嶋さんを慕っており、アジア選手権でもヘッドコーチとして、僕らの知らない監督の言葉や表情を間近で見てきた人です。胸の内には、僕らには想像もできない思いもあったのでしょう。そうしたものを決して表に出さず、監督代行という難しい役目に尽力されていました。
■ひとつも負けられない
ただ、振り返ってみれば、この一件はむしろ僕らにとって「枷」になってしまったのかもしれません。
日本代表の目標はただひとつ、金メダルです。そこに「長嶋さんのためにも全勝、負けなしで突っ走る。それが長嶋さんを勇気づけることにもなる」という、もうひとつの目標が加わった。というか金メダルよりもむしろ、後者の比重の方が大きかったかもしれません。