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「2040年半導体の未来」小柴満信著

 国際経済の競争力の要ともいわれる半導体。かつての独占的地位から転落した半導体ニッポンの復活はあるか。

  ◇  ◇  ◇

「2040年半導体の未来」小柴満信著

 日本経済を襲った「失われた30年」の間に、かつては世界最強を誇った半導体産業も衰え、技術力も技術者もなくなった。

 そういう常識に真っ向から異を唱え、「日本は国産化へまっしぐらに突き進むべきだという私の考えはいささかも揺るがない」と言い放つのが本書の著者。

 1990年代に半導体事業の拠点をつくりにシリコンバレーに赴任。モトローラ、IBM、インテルなどと関係を築いたというベテランだ。いまは経済同友会の「経済安全保障委員会」の委員長というのだから半導体産業への思い入れはハンパない。

 著者が期待をかけるのは量子インターネット。最新のスパコンで1万年かかる計算を量子インターネットならわずか200秒で演算するというのだから驚く。単に速いだけでなく絶対に安全な暗号化も可能になるという。

 物流もアパレルも世の中の仕組み自体を一変させる可能性を秘めた半導体の未来が描かれる。

(東洋経済新報社 1980円)


「今と未来がわかる半導体」ずーぼ著

「今と未来がわかる半導体」ずーぼ著

「半導体はいまや戦略製品」といわれても、実はよくわかってない、という人も少なくはないはず。同じ業界なら自然とくわしくもなるだろうが、仕事に関係なければ知るよしもない。だが、ネット証券に口座を作って個人投資でもやろうかと思ったら、やはり知っておきたい半導体。

 本書はそんな“今さら聞けない半導体”の手引きに最適。最も基本的な知識から始めて、初歩的な技術解説のほか、半導体業界の事情を世界と日本の両方について説明。事業の最新状況から未来の展望までをカラー図版多数で展開していく。

 素人にはいささか手ごわい技術情報もあるが、ことさら堅苦しい言葉遣いを避ける一方、へんに子どもじみた言い方もしないので好感が持てる。業界解説の章などは半導体業界への投資を考えたい人にも大いに役立つだろう。要するに読者のレベルとニーズに合わせてうまく使うのに向いているのだ。

 著者は「半導体業界ドットコム」というサイトを運営するその道の専門家。同名のYouTubeチャンネルでは声が若いので(笑)おそらく若手だろうと思われる。Amazonランキング第1位という版元の惹句も納得の一冊。

(ナツメ社 1980円)

「エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界」津田建二著

「エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界」津田建二著

 エヌビディアは時価総額3兆ドルを記録した半導体メーカー。主にネットゲームや画像処理に特化したボードを生産販売し、最新のAI技術を駆使した画像関連の開発でも注目されている。

 株価はこの1年で3倍と爆上がりし、AIバブルの象徴ともいわれたが、9月に入って急落。値下がり率は9.5%で1日で時価総額が約40.5兆円も減った。米国市場の1銘柄下げとしては過去最大。トヨタの時価総額(約39兆円)より多いが、それでも今後また上がるとの強気予想が絶えないのだ。

 本書の著者は日経で長年、技術系の記者や編集者をつとめ、半導体産業については日本が絶対的優位を誇った時代から現在までの栄枯盛衰を目のあたりにしてきた。それゆえエヌビディアの急成長の理由や企業としての本質部分の解説者としてはうってつけともいえよう。

 本書は典型的なPR型の企業研究だが、それをわきまえて読めば個人投資家のアナタにも役立つこと請け合い。

(PHP研究所 1980円)

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