風邪の初期症状の正しい理解と市販薬の使い方を知る…「ひき始めに服用する」わずか4%
処方薬が不足する中、寒さの広がりで風邪をひく人が増え、例年より早くインフルエンザも流行していて、新型コロナの変異株もひたひたと迫ってきている。風邪らしき症状が見られたら、市販薬で体を守ることが重要だが、多くの人はその使い方を誤っているという。
日本製薬団体連合会は毎月、処方薬の供給状況を調査。10月のデータによると、1万6000ほどの処方薬のうち、出荷量を調整する「限定出荷」は10.7%、「供給停止」は7.8%で、全体の18.5%の薬が十分に供給されない状態であることがわかった。こうした供給不足の処方薬のうち、6割以上はジェネリック医薬品で、咳止めや解熱鎮痛剤、去痰薬など。風邪をはじめ感染症によく使われる薬だ。
マイコプラズマ肺炎が9月ごろから子供を中心に流行しているのに加えて、東北や北陸の各県に続き、関東の東京や埼玉などでも流行期入りを発表した。新型コロナをめぐっては、従来の免疫をすり抜ける変異株「XEC株」が増加の兆しをみせている。
ジェネリック薬品メーカーに相次いだ不正問題が供給不足を招いた原因だったが、感染症が種類を変えながらだらだらと広がり続けていることも重なり、ジェネリック不足に追い打ちをかけているのだ。
■服用のきっかけは「のどの痛み、腫れ」32%
そうなると頼りにすべきは市販薬になるが、大正製薬は20日、ちょっと気になる調査結果を公表した。そのテーマは「風邪薬を飲み始めるタイミング」で、直近1年間で風邪をひいて市販の風邪薬を飲んだ621人にキッカケとなった症状を質問したところ、32.2%とダントツだったのは「のどの痛み、腫れ」だ。2位「発熱」を約13ポイント上回る。そして「鼻水、鼻づまり、くしゃみ」が15.1%で続いた。
市販の風邪薬を飲む症状としてはありふれたものだが、これがよくないという。医師でジャーナリストの富家孝氏がこう言う。
「風邪は、ウイルスや細菌が上気道に感染して増殖して炎症を起こす病気です。ウイルスなどが侵入して感染した直後は、それほどの症状はありません。のどの感染が広がって炎症になると、のどの痛みや鼻水などが現れて、さらに広がった炎症を抑えようと免疫細胞が働きます。そのとき、外敵侵入を知らせる情報は脳の視床下部に伝わり、体温を上げるように指示を出したから、発熱が生じるのです。市販薬は風邪のひき始めに服用することが大切なので、のどの痛みや発熱を自覚してからでは遅いということになります」
風邪の原因は、ウイルスが8~9割で、細菌は1~2割といわれる。病院で処方される抗生物質は細菌をやっつける薬で、ウイルスにはまったく効かない。風邪で病院を受診する人は「とりあえず抗生物質(抗菌薬)を」と医者にお願いするが、それが効くのはせいぜい1~2割でしかない。ほとんど効かないから、処方してもらってもほぼムダだ。
「本当に抗菌薬が必要なのは二次的に肺炎を起こしたり、へんとうに炎症が及んでいるケースなど限られますから、風邪は市販薬の対症療法で十分よくなります」(富家氏)
ところが、前述の調査結果は、市販薬の使い方が誤っていることを示している。正しい使い方を頭に入れておこう。富家氏に聞いた。
まず、風邪のひき始めはどういうときか。この基本から押さえておこう。
「体がぶるっとして『あれ、寒けがするな』と思ったら、それが風邪のひき始めです。あるいは、のどがイガイガするほどではないものの、何となく違和感があったりするとき。医学的にウイルスなどが侵入して感染が成立した直後です。のどに炎症ができてしまうと、のどの痛みや鼻の症状が出てきますから」
前述の調査で「悪寒」を挙げた人はわずか4%だった。圧倒的多数は、風邪がもっと進んでから薬に頼っているから、この考え方をしっかりと改めることが肝心だ。