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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

日本のマラソンのテーマは黙々と技術を追究する気迫と気力

公開日: 更新日:

 厚底の利点はこうだ。

 人は走る時に爪先でキックし、長丁場でのキック走法は故障につながる。トラックが土の時代、円谷がそうだったように、トラック長距離選手の大半はアキレス腱を痛めてシューズを脱いだ。マラソンという持久走を走り切るには踵から着地するベタ足走法、そして“紙のように”軽く薄い靴底が求められた。

 ところが、高地族の生活環境では長距離の概念が違うのだろう。80年代に爪先走法のアフリカ勢が長距離界を席巻し、これに着目したのが中山竹通だった。

 スピードがなかった中山は、ベタ足では中距離出身の瀬古に勝てないと走法を変えた。右爪先での着地は負荷がかかるため、嫌いなトラック練習で爪先側面の“点”ではなく“線”での着地技術を体得したという。瀬古のマラソン記録を更新、次に1万メートルの記録も破った中山は「スピードランナー」と呼ばれるのを嫌った。「スピードがあったらあんな苦労はしなかった」というのだ。

■記録やギアはただの手段

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