日本のマラソンのテーマは黙々と技術を追究する気迫と気力
いま、素材の軽量化による厚底のクッション効果で故障の不安は払拭された。選手の気概は膨らんだが、極端に言えば、高速化は競技者の技術よりメーカーの技術力に多く依存している。それが国際的時代であっても、日本のマラソンのテーマはそこではなかったはずだ。敗戦後の沿道に勇気を与え伝統を築いたマラソンは、記録ではなく気力だったから、記録更新だけでは不十分なのだ。
42年も前に2時間10分を切った宗茂なら、厚底シューズで2時間5分を切っただろう。中山なら、ラスト勝負ではかなわないとケニアのずっと前を走ったはずだ。
ただ、彼らがヒーローたり得た理由はそこにはない。日本が憧憬するマラソンにとって、記録もギアも手段にすぎない。黙々と研究し技術を追究する気迫……それが日本人のマラソン観だ。