就職を考えていた小川一平に大学進学を決断させた恩師の“寝技”
小川一平(2年目・投手・24歳)
2015年の春、神奈川・横須賀工高の三木健太郎監督は、生きた心地がしない日を過ごしていた。
■「野球をやめます」
当時、同校の3年生だった小川は部内の人間関係に悩み、「『このまま野球をやめます』と話していた」(三木監督)という。大学へ進学するつもりは毛頭なく、就職を考えていた。
しかし、三木監督は小川に野球を続けてほしかった。自身がかつて所属した中本牧リトルシニアの先輩で、当時、横浜隼人高野球部副部長を務めていた佐野辰徳氏に嘆願。
「小川が進学できる大学を紹介してください」
頭を下げられた佐野氏は自身の出身校、東海大九州の南部正信監督に連絡。熊本から遠路はるばる横須賀工高へ視察に訪れた南部監督が、小川を同大にスカウトするに至った。
小川にとっては寝耳に水だった。
「本人はもちろん親御さんも『え!? 熊本!?』と、かなり驚いていました。勝手に裏で動いたことは内緒にしていましたからね。返事をもらうまでの2、3週間はもう、気が気じゃありませんでした。もし小川が断れば、私は佐野先輩に顔向けできません。先輩も東海大の南部監督とマズいことになってしまう。心の中で『絶対に断るなよ』『早くオッケーしてくれよ』と言い続けていました(笑い)」(三木監督)