阪神・矢野監督「今季限り退任」キャンプ前日に仰天公表の全内幕と広がる波紋

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 キャンプ前日という異例のタイミングでの公表。主将の坂本がそうだったように、事情を知らなかった選手、関係者はビックリ仰天だった。

 1月31日、阪神矢野燿大監督(53)が今季限りで退任すると言い出したからだ。

■昨季も辞意意向

 昨季、3年契約を満了し、新たに1年契約で続投した指揮官はこの日の全体ミーティングで、選手、スタッフに対し、退任する旨を説明。報道陣には「チームのためにも、選手のためにも、(そして)申し訳ないけど俺のためにも伝えさせてもらった」と話した。退任を決断したのは昨季終了後だという。「矢野監督は藤原オーナーからの続投要請を受諾したものの、昨季限りで退任する意向もあったと聞いています」とは、阪神OB。

「球団社長を兼務していた藤原オーナーは、矢野監督の長期政権も視野に入れていた。しかし、開幕から首位を独走しながら夏場にチームは息切れ。最終的にV逸となった。矢野監督自身、契約最終年だったこともあり、何度か辞意を漏らすこともあったそうです。ファンやマスコミはもちろん、親会社や球団内でも、采配や選手起用に関して、『矢野監督では厳しい』という声が少なくなかった。矢野監督はガッツポーズなどで明るく振る舞う一方、嫌でも周囲の評価は耳に入る。藤原オーナーや谷本副社長が強く慰留したことで、続投を決断したものの、このオフ、後ろ盾だった谷本副社長が副社長職を退任し親会社へ復帰することが決定、取締役オーナー代行になり、球団は百北球団社長-粟井球団副社長体制に一新されることも、影響した可能性があります」

野村克也氏は「阪神はしんどい」と

 ではなぜ、翌日に新シーズンを迎えるタイミングで「発表」したのか。

「球団上層部は事前に把握していたようですが、自分自身に対して奮起を促すとともに、選手にも一日一日を大事にしてほしいという思いを伝える意味でこの日を選んだということでしょう」

 と、他球団関係者が指摘すれば、元阪神の評論家・福間納氏は、「なぜキャンプ前日に言ったのか、その意図は理解できないですが、話を聞いたとき、監督を続けるのがしんどかったのかなと思った」と、こう続ける。

「僕が阪神コーチ時代、あの野村監督が『阪神はしんどいわ』と漏らしたことを思い出しました。阪神の監督はただでさえ、激務。日本一と言っていい熱狂的なメディアやファンがいて、勝てばまだしも負ければ大きな批判を受ける。普通は一年でも長く監督をやりたい、と思う気持ちがあるはずですし、昨季は大差をつけながら最終的にV逸したものの、就任1年目から3位、2位、2位と一定の成績を残している。昨オフ、監督を要請された時点で今季の結果いかんにかかわらず、あと1年と決めていたのかもしれない。そうしないと、体や心が持たないのかもしれません」

 まして阪神は、「ポスト矢野」になる目ぼしい人材に乏しい。監督待望論がある藤川球児氏は一昨年に引退したばかりだし、2005年優勝時の監督である岡田彰布氏くらいしかいないのが現状。矢野監督としても、早い段階で身を引くと公言することで、次の体制へ移行しやすいと考えているのかもしれない。

「自己満足、自己陶酔」

 こうした経緯があるにせよ、キャンプ前日の退任発表がチームに与える影響は、決して小さくない。前出の福間氏が言う。

「あと1年で辞めるのかとしらける選手、監督のために頑張ろうという選手がいると思う。僕が選手だったら、監督の任期うんぬんではなく、自分のためにしっかりやろうと思います。現役時代、監督とソリが合わないこともありましたが、コーチの『おまえはよう頑張った』という言葉に救われたし、いくら監督が代わろうとも、自分が成績を残さないことには年俸が下がる。後半戦で優勝から遠ざかっているような状態なら、モチベーションはガタ落ちするでしょうけど、あとはどれだけ、自分のため、監督のためと思う選手がいるかでしょう」

 その一方で、評論家の山崎裕之氏は「え? なんですか? それは」と驚きを隠せない。

「キャンプ前日のミーティングで退任発表をした監督なんて前代未聞。きっと、選手だって困惑していますよ。仮に矢野監督の実績が突出しており、多くのナインから慕われているならば、『監督を男にするためにも頑張ろう!』となるでしょう。でも、今の阪神がそうなるとは思えない。むしろ選手の関心は『次の監督は誰だ?』ということに集中してしまうのではないか。矢野監督は、チームのためにも選手のためにも、申し訳ないけど、俺のためにもなるのかなという決断だった、と言っているが、ただの自己満足、自己陶酔にしか聞こえない。キャンプ前日のミーティングなんて、『昨季悔しい思いをしたから、今季は何としてでも勝とう』とかそれくらいでいい。個人的な思いは腹の中にとどめておけばいいんです。矢野監督は人間の心理がわかってないとしか思えませんよ」

 矢野監督が優勝のために今季限りを公表したとすれば、いきなり「最後のカード」を切ったと言っても過言ではない。その結果がどうなるかは定かではないが、不発に終わっても何ら不思議ではない。

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