ドラ1蹴ってプリンスホテル入り 「野球部1期生」だからこその超VIP待遇だった
■タクシー通学、レストラン、洗濯すべてタダ
大学4年になると、「関西の社会人で頑張るのもええやないか」と言っていた父が「プロへ行け」と繰り返すようになった。中日が最も熱心でスカウト部長に「1位指名」を約束されたが、社会人チームを立ち上げることが決まっていたプリンスホテルからも「大学からプロ顔負けのメンバーを集める。一緒にやろう」と誘われていた。当時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった西武グループの会社。第1期生というのも魅力だった。高3時に一緒に慶大を受験し、1浪後に入学して活躍した堀場秀孝(元広島など)、駒大の石毛宏典(元西武など)も入ると聞いた。私はプリンスホテル入りを決断した。
「ドラ1を蹴るなんて、おまえはアホか!」
怒った父と大ゲンカになったものの、中日側には「とりあえずプリンスホテルに2年間お世話になります。もし2年経った時に中日さんがボクを指名してくださるなら、その時は必ず入団します」と頭を下げた。
秋のリーグ戦が終わると、専大の寮を出ないといけない。すると、入社が決まった専大の3人には、新宿プリンスホテル内に部屋が用意され、無料で泊まっていいという。さらにホテルから川崎・生田キャンパスまでのタクシーチケットが渡され、往復の通学で使うことができた。ホテル内のレストランでの食事は全てタダ。洗濯物はクリーニングに出していいという。当時の支配人には頻繁に食事に連れていってもらった。もちろん、普通に入社する社員ではあり得ないことで、「野球部1期生」だからこそのVIP待遇だった。