「デートがあるから早く終わらせて」と頼むと桑田真澄は「任せてください」とニヤリ
私が巨人へトレード移籍した1989年、11試合連続完投勝利の不滅のプロ野球記録を樹立した斎藤雅樹と同様、自己最多の17勝(9敗)、防御率2.60の桑田真澄もすごい投手だった。
私がこれまで受けてきた投手の中で「制球力」はナンバーワン。ブルペンでは私が構えたところに90%は投げ込んでくる。ミットを動かす必要のない投手である。150キロを超える直球があるわけではないが、球にキレがあり、横の変化のシュート、スライダー、縦の変化のカーブ、フォークも使える。実にバリエーションの豊富な投手だった。
さらに野手顔負けの打撃、手を抜かない走塁など、「野球センス」という点でもナンバーワンかもしれない。
移籍2年目の90年に東京ドームで思い出深い試合があった。桑田とバッテリーを組んだ試合に、当時交際中だった現在の妻が応援に駆け付けてくれていた。私は桑田に冗談半分でこう頼み込んだ。
「今日は彼女が来ていて試合後にデートなんだ。だから早く終わらせてくれ」
桑田の緊張をほぐす意図もあった。