テニス選手がラケットを「虐待」する深層 全仏OP女子で客席の子供をかすめる“事件”
今年こんな“事件”があった。女子2回戦で勝利したイリーナ・ベグが試合中、腹立ちまぎれに放り投げたラケットが客席の子供をかすめた。ベグは慌てて一緒に写真を撮ったりしてごまかしたが、テニスでこの手の行為が実に多い。日本のファンは厳しく、大坂なおみや錦織圭がやればネットは炎上する。
ラケットアビューズではマラト・サフィンが知られ、台頭中のロシア勢は少年時代に真似したという。フェデラーも10代の頃はラケットに当たり散らし、バグダティスが立て続けに4本叩き折るのを見たことがある。
アビューズは「虐待」の意味で、ボールを叩きつけるのはボールアビューズ。時速200キロの球速で5センチ幅のライン際を攻めるのだからストレスフルは分かるが、昔からあったわけではない。
85年のウィンブルドンで17歳のベッカーが「ぶんぶんサーブ」を武器に初優勝した。当時ナンバーワンのマッケンローがこう話していた。
「ぼくらはスイートスポットに当てないとラケットが折れるという意識を持って育った。本能的にあんな力任せのサーブは打てないんだ」