ロッテ佐々木朗希「甲子園で1安打黒星」も大収穫 選手第一の吉井監督が描く“成長曲線”の妙
「四球と暴投以外は良かった」
この日は先発して6回を投げ1安打1失点、10奪三振。六回に先頭打者に四球を与えて二盗を許すと、自らの暴投で1死三塁に。大山に高めに浮いた変化球を右前にはじき返されて失点。援護に恵まれず1安打で今季初黒星を喫し、「四球と暴投がすべてかなと。それ以外は良かったと思うので、そこだけがもったいなかった」とは試合後の本人。自分のミスが、結果として敗戦につながった。ときには、たった1本のヒットが命取りになると悔やんだのは、むしろ今後に向けた収穫だろう。
計69奪三振は12球団トップ。160キロ超の速球と落差の大きなフォークで打者をねじ伏せるスタイルは健在。いまや球界を代表する投手なのは疑いようがないが、「吉井監督の意向が大きい」と、別のロッテOBがこう続ける。
「吉井監督は、まず、選手のためになることを考える。何が選手にとってベストかを第一に考え、そのうえでチームの勝利を目指すスタンスです。コーチ陣にもそのつもりでやってほしいと伝えています。佐々木朗希をあえて甲子園で投げさせたのもそれが本人にとってプラスになると考えているからだし、プロ4年目ながらいまだ球数や投球回数に制限を設けているのは未然に故障を防ぐため。勝利優先ならフル回転させるでしょうが、佐々木朗希にはそれに耐えられるだけの体力や筋力が足りないから、あえて制限を設けているのです」
■結果として勝ちにつながる
佐々木朗希に対してだけではない。
「7年目の種市篤暉(24)を3日の阪神戦で投げさせたのは、佐々木朗希同様、青森の八戸工大一高時代に甲子園の土を踏めず悔しい思いをしたことも関係しているのでしょう。目下、14セーブでパのトップを走る益田直也(33)が抑えとして復活したのも、吉井監督が本人の負担にならないよう配慮しているからでもある。以前は3連投がたたって、右腕にじんましんができたこともあったそうですが、なるべく間隔を空けて起用するだけじゃない。不調で登録を抹消するまで益田とダブルストッパーを務めていた澤村拓一(35)にはどちらが先に投げるか、試合前に本人たちに伝えていたといいます」(前出の別のOB)
そうやって選手個々がベストのパフォーマンスを発揮できるような環境を整えることが、結果としてチームの勝利につながると、吉井監督は考えているのだろう。
ロッテはこの日、敗れて今季初の4連敗。2位のオリックスが勝ったため、5月17日から守ってきた首位から陥落したものの、昨年5位に低迷したチームと佐々木朗希の躍進は指揮官のハンドリングによるところが大きいようなのだ。