バスケ男子W杯快進撃の立役者 司令塔・河村勇輝の父が語る「非強制」の育て方

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 圧巻の逆転劇だった。

 31日に行われたバスケットボールW杯順位決定戦で日本(世界ランキング27位)は格上・ベネズエラ(同17位)と対戦。常にリードを許す展開で迎えた第4Qで、その差は最大15点に。それでも日本は足を止めることなく運動量で上回り、終わってみれば86ー77と逆転勝利。2024年パリ五輪出場へ王手をかけた。

 快進撃を支えるのが司令塔のポイントガードとして、この日も19得点11アシストと躍動した河村勇輝(22)だ。身長172センチの小柄な体格でコートを縫うように駆け巡り、ベネズエラ選手を翻弄。2点をリードした第4Qの残り1分では試合を決定付ける3ポイントシュートを決めた。

 河村は歴史的金星を挙げたさる27日のフィンランド戦でも25得点。世界的な評価も急上昇中だ。一体どのように育ったのか。元中学教師の父・吉一さん(62)を直撃した。

■「親は子の伴走者」

 ──教育方針は。

「何事も強制しないことです。本人がやると決めたことがあれば、親はそれをサポートしながら伴走するのが務めだと思っています。興味を持って始めた取り組みなのだから、嫌いにならないように、もっと好きになるように、ずっと好きなままでいられるように。やり始めは芽が出なくても、続けていくうちに得られるものがきっとあると思うんです。かえってそれがよかったのかもしれません。勇輝はどこかのインタビューに『強制されなかったからバスケを続けられた』と話していました」

 ──バスケではどのようなサポートを。自宅の庭にはバスケのゴールが設置されているとか。

「いつでも練習できる環境を与えてやりたいなと思ったんです。夜に練習できるように、工事現場で使うような照明を買ったりも。ボールが飛んでいかないように周囲にネットをかけたり、雨の日はブルーシートや新聞紙、段ボールで除水をしたり……。プロの試合にもよく連れて行きました。大変に思う方もいるかもしれまんが、私自身も楽しみながらやっていましたね」

野球水泳柔道、相撲を経験

 ──河村選手は幼い頃から多くのスポーツに触れてきた。

「海外では常識になっていることですが、幼少期に多くのスポーツを経験した方が体の動かし方などの感覚が研ぎ澄まされるし、ひとつの場所に負荷がかかることも避けられます。私もそう考えていたので、本人がやりたいと言ったことはやらせてみよう、と。

 バスケを選ぶまでに野球や水泳、柔道もしていました。そういえば、相撲大会で優勝したこともありました。結果的にはそれが良かったと思っています。バスケを始めた当初、『野球をしていたからボールを投げやすい』と話していましたし、柔道では体幹が鍛えられたはず。今に生きている部分があるかもしれません」

 ──そもそも、小学2年で、なぜバスケを。

「勇輝は幼稚園時代から野球が大好きで、公園でするキャッチボールが日課のようなものでした。家にはバッティングのトスを上げるマシーンもあったくらいです。ただ、地元の野球チームは年齢制限があり、しばらく『待った』をかけた状態が続きました。

 そうして入団できる学年になり、野球道具をそろえるために、(自宅は山口県だが)広島にある大きなショッピングモール内のスポーツ用品店に連れて行った時です。たまたまバスケのユニフォームを目にした勇輝は、『かっこいい。やっぱり、こっちをやってみたい』と(笑)。すでに野球チームの下見もしていたので、ビックリしましたよ。何があるか分かりませんね」

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