【ボートレース】工藤一彦さん(上)先に始めたのは競輪だが、やり始めたらボートははるかに面白い
必ず①④⑤のボックス。マクリの迫力がたまらない
あるレースのこと。いつものように②⑥を1万円だけ買おうと思ってオッズを見たら、とんでもない万車券。「こりゃ、くるわけないわ」と本命車券に切り替えたところ、結果はなんと②⑥。枠連しかない時代でも1万円以上の配当がついた。
「やったな、ぞう。200万円近いぞ」
車券はただの紙くずとはすぐには言えず、顔面蒼白になったことを覚えている。
ボートレースは現役引退後に覚えた。きっかけはよく通ってた焼き肉屋の大将が大のボートファンで「ぞうさんもやってみいや」と勧められたことだった。
「オレ、ボートはさっぱりわからん」
「6艇しかいないから難しくない。有利な内枠を買うといい」
「配当が安いとつまらんしな」
「たまに外枠も飛び込んでくるから万舟券もあるんやで」
そんなやりとりがあって始めたところ、競輪よりはるかに面白かった。
ボクが好きな艇番は真ん中から外の枠だ。とくに4号艇がカドから猛ダッシュで攻めて、②と③をつぶして鮮やかなマクリをかます。この迫力がたまらない。だから好きなフォーカスは④①⑤とか④⑤①。これなら配当もそこそこつくし、①④⑤のボックスは必ず押さえるようにしている。
そして、ボクはいよいよ本格的にボートレースにハマっていく。その原因は、予想もしない事態に直面したことだった──。 =つづく
▽工藤一彦(くどう・かずひこ) 1956年5月20日、青森県生まれ。右投げ右打ち。茨城・土浦日大のエースとして甲子園に春夏連続出場した74年のドラフト2位で阪神に入団し、85年の日本一に貢献。実働13年で66勝63敗4S。野球評論家。